「値下げで過去最高益」のイオンが、賃金を上げなければ非常にマズいワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
「値下げ」は消費者にとって喜ばしい話のようだが、実は日本全体の視点で考えると、あまり喜ばしい話ともいえない。その理由は……。
悪循環に陥る前に
さて、そんな話を聞くとイオンの経営陣や社員の皆さんは「なぜウチだけがリスクを負ってそんなことをしなくてはいけないのか」と腹が立つことだろう。
ただ、残念ながら日本人がこれ以上貧しくならないためには、イオンのような大企業に頑張ってもらって、コストコやイケアのような時給を当たり前にしてもらうしかない。世界では常識の「物価上昇に伴う最低賃金の引き上げ」が、日本では「異端」とされているからだ。
産油国や新興国が経済発展していくにつれて、原料や石油価格は自然に上昇していく。それを受けて先進国も物価が上昇している。食料品や生活必需品が値上がりするわけだから当然、それにともなって消費者の収入も上がっていかなければ景気は冷え込み、経済も停滞するという悪循環に陥る。
だから、多くの国は「物価上昇に伴って最低賃金を段階的に引き上げていく」という手法を取る。例えば、米国では1月1日に、全米50州のうち22州が最低賃金を引き上げた。タイ政府も23年12月26日、最低賃金を24年1月から引き上げる方針を発表。3月にはさらなる引き上げを計画しているという。
ただ、残念ながらわが国では「さ、最低賃金の引き上げだと! そんなことをしたら中小企業がバタバタ倒産して日本はおしまいだ!」という独特の終末思想が社会に定着しているので、こういう政策は「バカがやること」だと却下されている。
その代わりにこの「失われた30年」の間、日本人が信じて一生懸命続けてきたのが「賃金ってのは企業の業績が良くなれば自然に上がっていく」というスタイルだ。
景気が良くなると、トヨタやユニクロが賃上げをする。すると、下請け企業や競合も賃上げをするので、最低賃金が引き上げられ、トントン拍子で賃上げが進むというものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
イオンの「最低賃金以下」問題から見える、“安いニッポン”の無限ループ
イオン九州が、パート従業員を最低賃金よりも低い時給で募集していることが明らかになった。とはいっても、これは単純なミス。システムの更新がきちんとできていなかったので、過去の“安い時給”が表示されていたわけだが、筆者の窪田氏は「見過ごせない出来事」だと指摘している。どういうことかというと……。
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。
「有名チェーン店」が店を出す駅、出さない駅を可視化してみた
駅のまわりにどんなカフェチェーンがあるのか。「路線図風に表したらわかりやすいかも」と思い、可視化してみました。
「年収700万円」の人が住んでいるところ データを分析して分かってきた
「年収700万円」ファミリーは、どんなところに住んでいるのでしょうか。データを分析してみました。
