COP28で産油国が議長に 「化石燃料との決別」が宣言された交渉の舞台裏:「化石燃料の段階的廃止」の行方は(4/4 ページ)
昨年開催されたCOP28の議長国は、産油国のアラブ首長国連邦(UAE)だった。加えて、議長は国営石油会社のCEOでもあった。「気候変動会議の議長を化石燃料会社のCEOがリードできるのか?」と大きな話題を呼んだCOP28、どのような結末を迎えたのか。
日本にとっての「宿題」
COPにおいて化石燃料との決別が宣言されたことは大きな意義を持つが、もちろん、それだけで世界が変わるわけではない。
そもそも、上述した通り、グローバル・ストックテイクの真価は、世界全体での結論を出した上で、それを各国の削減目標およびその他の対策に反映させていくことにある。世界的な結論を、各国の文脈に落とし込んでいく作業が必要なのである。
パリ協定では、締約国は5年ごとに排出量削減目標を含む国別目標を提出することになっている。次回の締切は2025年。しかし、過去の決定で、削減目標の最初の案は25年のCOPの9〜12カ月前に提出することになっている。つまり、24年12月〜25年3月のどこかで出すことになる。CO2の削減目標は、その国のエネルギー政策にも深くかかわるため、その策定にはそれなりの期間と労力を要するし、民主的なプロセスで決めようとすればなおさらだ。しかし、日本はそもそもそのプロセス自体を始められていない。
現在、ほとんどの国は30年までの排出量削減目標をかかげているが、次に提出する目標は35年を目指した目標になる(日本も含め、一部の国は40年を射程においた目標を掲げる可能性もある)。
グローバル・ストックテイクは、先の「化石燃料」に関する文言に加えて、IPCCの第6次評価報告書が示した必要な削減量についても「認識する」という形で言及している。具体的には「気温上昇を1.5℃に抑えていくためには、世界の温室効果ガス排出量を30年までに19年比で43%削減し、35年までには同60%削減することが必要である」とされている。
化石燃料からの決別の方向性を打ち出すような具体的なエネルギー政策と、上記のような削減水準が世界全体で必要であるという「認識」が、きちんと次期35年目標に反映できるか。COP28での合意は、世界全体の認識が大きくシフトしたことを示したという意味で歴史的であったとはいえ、その実行につなげていくことが、日本も含め多くの国々の課題として課されている。
関連記事
- レジ袋有料化の“二の舞”か プラ削減のために導入した「紙ストロー」が別の環境問題を引き起こすジレンマ
2022年は「プラスチック削減元年」と言っても過言ではないほどに紙ストローが普及した。環境に配慮した取り組みのようだが、レジ袋有料化同様に紙のほうが本当に環境負荷が小さいのか? という疑問が消費者の中で渦巻いているように感じる。紙ストロー移行は本当に意味があるのかというと…… - 「生物多様性」がビジネスに与える影響は? 森林を資源とする企業が知っておくべきこと
世界的な規模で続けられてきた自然環境の破壊が、なぜ今ビジネスにおいて、注目されているのでしょうか? 生物多様性とビジネスの関連性について解説します。 - 欧州の新サステナビリティ規制「CSRD」 日本の対象企業は約800社、今後の対応は?
2024年1月1日から、欧州の大手上場企業およそ1万2000社を対象にサステナビリティ規制「CSRD」の運用が開始される。これは欧州に限った話ではない。日本企業にはどのような影響があるのか、解説する。 - 「キリン 午後の紅茶」に学ぶ、生物多様性とビジネスを両立させるには? 情報開示や考え方を解説
生物多様性に関する議論は加速しており、気候変動の次の重要テーマとして国際目標が定められるなど、この1〜2年で企業による生物多様性や自然資本への関心が急速に高まっています。ビジネスと生物多様性を両立させるために企業は何から取り組むべきでしょうか? 「キリン 午後の紅茶」の事例をもとに解説していきます。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.