欧州の新サステナビリティ規制「CSRD」 日本の対象企業は約800社、今後の対応は?(1/4 ページ)
2024年1月1日から、欧州の大手上場企業およそ1万2000社を対象にサステナビリティ規制「CSRD」の運用が開始される。これは欧州に限った話ではない。日本企業にはどのような影響があるのか、解説する。
本シリーズでは、サステナビリティに関する新しいグローバル規制の具体的な内容や、それらがグローバル市場や企業活動に与える影響について詳しく説明します。
前回までに、現在の状況に至った要因とその背景や全体像の概説、今後求められる対応やそれらを進めるための3つの指針を紹介しました。今回は欧州での取り組みにフォーカスし、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)で求められる情報開示の内容と、日本企業への影響や対応方針を、気候管理・炭素会計プラットフォームを運営するパーセフォニ社のエミリー ピアスと高野惇が解説します。
CSRDとは?
欧州連合(EU)が統括するCSRDは、従来のサステナビリティ情報開示(NFRD)をさらに拡充した規制であり、2024年1月1日から欧州の大手上場企業およそ1万2000社を対象に適用が開始される予定です。
その後4年をかけて段階的に対象企業が拡大され、最終的には世界中の5万社近くで対応が必要となる見込みです。CSRDは、欧州域外の市場にも広範囲な影響を及ぼす規制です。そのため、欧州で事業を展開している多くの日本企業も、CSRDに基づく報告義務を負うことになります。
また、現時点でCSRDによる直接的な法的義務を負わない日本企業も、CSRDの内容をある程度把握し、その影響に対応できるよう準備を進めることが今後の経営リスクの観点から重要となります。
CSRDがもたらす影響を理解するためには、まずその目的を正確に理解することが重要です。 欧州は、世界初の「カーボンニュートラルな大陸」になるため、50年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指す「欧州グリーンディール」を掲げており、CSRDはその一環として21年4月に欧州委員会が提案したものです。
CSRDは、広範囲の企業に対してより包括的で厳格なサステナビリティに関する情報開示を義務付けています。これにより、投資家のみならず、消費者、労働者、市民社会などのあらゆるステークホルダーの意思決定をサポートする有益な情報の提供を企業に促すことになります。
投資家や消費者がより質の高い情報にアクセスできることで、市場活動における判断材料が増え、サステナビリティへの影響を配慮した選択が可能となります。CSRDの目的は、これらの情報開示を推進した結果として持続可能性の高いビジネス慣行を促進することです。
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