強まる気候関連情報の開示、欧州・米国の動きは? 企業の開示対応の3つの指針:世界の「開示」動向を知る(後編)(1/2 ページ)
気候関連情報の開示要請が世界的に強まっている。欧州や米国ではどのように動いているのか? それに伴い企業にも対応が求められている。開示対応のための3つの指針を解説。
本シリーズでは今後、さまざまなグローバル規制の進展を紹介しながら、それらが企業に与える実質的な影響について取り上げていきます。 前回は、気候関連情報の開示に関する現在の状況に至った要因と、その背景を中心に全体像を概説しました。今回は、企業に今後求められる開示対応と、それらを進めるための3つの指針を紹介します。
強まる開示規制、欧州や米国の動きは? 日本も計画を発表
多くの国や地域で気候関連のリスク開示は、任意報告から規制報告の対象となりました。その動きは数年前から進んでおり、TCFDの提言に沿った規制が施行されています。ただし「報告しない場合はその旨を説明する(コンプライ・オア・エクスプレイン)」というアプローチが認められている場合も多く、適用範囲やスコープは国・地域ごとに大きく異なっていました。
しかし、グローバル規制は新たなフェーズに移りつつあります。各当局が既存規制の強化を進めており(または導入済み)、要件の厳格化という形で市場の期待に応えようとしています。
欧州では、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が施行され、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)も正式に承認されました。CSRDの最初の適用対象となる企業群は、2025年度の報告に向けて、来年度からデータ収集を開始する必要に迫られます。CSRDの影響は欧州域内にとどまりません。世界中の大企業や多国籍企業が適用対象となり得るため、あらゆる地域のビジネスに影響が及ぶことは必至です。
米国では、上場企業に気候関連情報開示の強化と標準化を求める米国証券取引委員会(SEC)の規則案の策定が大詰めを迎えています。SECの規則案も、TCFDを参考にまとめられたものです。さらに、カリフォルニア州ではつい先日、上場・非上場を問わず同州でビジネスを展開する全ての大企業に対して、TCFDの提言に基づく気候変動リスクと、GHGプロトコルに沿った温室効果ガス排出量の報告を義務付ける法律が成立したばかりです。
また、 ISSB基準はIFRSで既に策定された国際会計基準(IAS)に倣い構築された基準であるため、世界中の証券規制当局や証券取引所がISSB開示基準に沿った基準設定を推し進めています。さらに、証券監督者国際機構(IOSCO)も、ISSB基準を推奨しています。
このIOSCOの推奨を得てからわずか数カ月の間に、オーストラリア、ブラジル、カナダ、日本、香港、ケニア、韓国、ナイジェリア、シンガポール、台湾、英国など、経済規模にかかわらず、さまざまな国の規制当局が、ISSB基準を自国の規制への導入に向けた行程や計画を発表しています。例えば、我が国は25年3月末までに国内基準の最終化を予定しています。前述以外の国々も、近い将来同様の取り組みを進めることが見込まれます。
各国の規制の詳細には、それぞれの国における既存の規制などを踏まえた内容となるため、当然違いがあります。しかし、規制の軸となるISSB基準はTCFDとGHGプロトコルに沿って作られているため、企業が取り組むべき方向性は共通しているといえます。
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