日本企業のサステナビリティ開示率9割超 なのに“場当たり的な”対応が目立つワケ:明るいサステナビリティ変革(1/3 ページ)
当社の調査によると、日本のサステナビリティ開示率は96%と高く、開示の質も56%と英国に次いで2位です。にもかかわらず、”場当たり的な対応”に映るのはなぜなのでしょうか?
連載:明るいサステナビリティ変革
サステナビリティを巡る世界の動きは非常に速く、企業は日々新たな対応が求められています。気候変動から自然資本、人的資本、サステナビリティ全般へと、情報開示の対象は拡大し、開示義務化の流れも世界的に加速しています。今後情報開示を充実させていくためには、組織変革も不可欠です。開示先行で変革を強いられている中、企業がサステナビリティ変革を受動的でなく能動的に変革を推進するにはどうすればいいのか。EYストラテジー・アンド・コンサルティングが7回に分けて解説していきます。
SDGsやESGといった用語の認知度は徐々に高まってきたように感じるものの、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」「ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)」などを知っている人はそれほど多くはないかもしれません。
上記で挙げた用語は、いずれもサステナビリティに関する情報開示の世界的な取り決めを指します。世界中の多くの企業がこうした要請への対応に現在進行形で追われており、日本企業も例外ではありません。基準に沿った情報開示だけでなく、サステナビリティ経営に積極的に取り組み、既存の仕組みや戦略を変えていくことが求められているのです。
ただ実際のところ、現在の情報開示に関する世界的な要請はあくまでレコメンデーションであり、強制ではありません。しかし、情報開示の枠組みの一つであるTCFDについて言えば、すでに東証プライム企業を対象に実質的に義務化されています。
世界的に見ても、TCFDのみならず、米国ではSEC(連邦政府機関)、欧州ではCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の指導のもと、全ての上場企業(CSRDは一定の条件を満たした非上場企業も含む)に気候変動、サステナビリティ全般の情報開示を義務付ける方向で検討が進んでいます。
環境領域一つをとっても、CO2の排出量だけでなく、脱炭素化に向けた移行計画、生物多様性の保全、水・海洋資源の管理など新たな開示項目が追加されています。従来に比べ、企業がやらなければならないことが各段に増えているのです。
とりあえず開示の「場当たり対応」 日本企業はどう変わるべき?
関連記事
- レジ袋有料化の“二の舞”か プラ削減のために導入した「紙ストロー」が別の環境問題を引き起こすジレンマ
2022年は「プラスチック削減元年」と言っても過言ではないほどに紙ストローが普及した。環境に配慮した取り組みのようだが、レジ袋有料化同様に紙のほうが本当に環境負荷が小さいのか? という疑問が消費者の中で渦巻いているように感じる。紙ストロー移行は本当に意味があるのかというと…… - 「キリン 午後の紅茶」に学ぶ、生物多様性とビジネスを両立させるには? 情報開示や考え方を解説
生物多様性に関する議論は加速しており、気候変動の次の重要テーマとして国際目標が定められるなど、この1〜2年で企業による生物多様性や自然資本への関心が急速に高まっています。ビジネスと生物多様性を両立させるために企業は何から取り組むべきでしょうか? 「キリン 午後の紅茶」の事例をもとに解説していきます。 - 2023年に「統合報告書」はIFRS基準に サステナビリティ開示ルールはどう変わる?
「統合報告書」や「サステナビリティレポート」におけるサステナビリティ開示基準が2023年に変更、IFRS基準にグローバルで適用される。準備しておくべきことについて解説する。 - 「地球にやさしい」では買わない? Z世代の環境意識と消費行動にギャップ
Z世代と聞くと「環境意識が高い」というイメージがあるが、実際のところ環境に対する興味・関心は年齢が上がるほど高くなる。なぜ、そのような誤解が生まれたのか。ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員の久我尚子氏に分析してもらった。 - KDDIやソニーも採用 ESG指標と役員報酬の連動、度合いや指標はどう決める?
企業のESG経営が進むにつれて、ESG指標と役員報酬を連動させる企業は増加傾向に。連動度合いや連動指標の策定、結果検証の際に検討すべき点などについて考察していきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.