欧州の新サステナビリティ規制「CSRD」 日本の対象企業は約800社、今後の対応は?(2/4 ページ)
2024年1月1日から、欧州の大手上場企業およそ1万2000社を対象にサステナビリティ規制「CSRD」の運用が開始される。これは欧州に限った話ではない。日本企業にはどのような影響があるのか、解説する。
CSRDの対象となる企業は? 開始時期はいつから?
多くの企業が「自社は法令の対象になるのか?」「いつから適用されるのか?」といった懸念を抱いているかと思います。CSRDの最初の適用対象となるのは、EU規制が定める下記の3つの条件に該当する「大企業(large undertaking)」(上場・非上場問わず)です。
- 年間純売上高5000万ユーロ超
- 従業員総数250人超
- 総資産2500万ユーロ超
EU域内で設立された子会社または子会社グループが、上記3つの条件のうち2つを満たす場合、25年度データを基に最初のCSRD報告書を作成し、26年に公開する必要があります。
英・Refinitiv(リフィニティブ)社の推計によると、欧州域内の証券取引所に上場しているEU域外国企業およそ1万社が適用対象となり、そのうち日本企業は790社ほどとされています(参照:WSJ「At Least 10,000 Foreign Companies to Be Hit by EU Sustainability Rules」)。ただし、欧州の証券取引所に未上場であっても、EU加盟国内にある子会社または子会社グループが「大企業」の定義を満たしていればCSRDの適用対象となるため、注意が必要です。
あくまで25年はスタート地点に過ぎず、26年度からは欧州の証券取引所に上場する中小企業も対象となります。さらに28年度には、域外適用の規定が追加されます。欧州域内に年間売り上げが4000万ユーロ以上の子会社または支店があり、かつ欧州での事業全体で年間1億5000万ユーロの売り上げを得ている場合、その子会社または支店は、グローバルに事業を展開する親会社も含めた連結ベースでサステナビリティ報告書を提出する必要があります。
この規定により、対象となる日本企業は先述の数字よりさらに増える可能性があります。また、欧州域内子会社が「大企業」に該当し25年から報告を始める企業は、将来的に親会社も含めた連結ベースでの報告の準備が必要になります。
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