欧州の新サステナビリティ規制「CSRD」 日本の対象企業は約800社、今後の対応は?(3/4 ページ)
2024年1月1日から、欧州の大手上場企業およそ1万2000社を対象にサステナビリティ規制「CSRD」の運用が開始される。これは欧州に限った話ではない。日本企業にはどのような影響があるのか、解説する。
何を、どのように開示するべきなのか?
CSRDは、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づく報告を義務付けています。最初に適用が開始される「大企業」向けの基準は確定しており、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連の10基準を定めています(下図参照)。
先述の通り、CSRDは多くのステークホルダーへの情報提供を目的としています。したがって、ESG関連の課題が企業に及ぼすリスク(財務的マテリアリティ)だけでなく、企業が環境や社会に広く与えている重大な影響(インパクトマテリアリティ)についての報告も求める、いわゆる「ダブルマテリアリティ」の概念を取り入れています。
企業は、ダブルマテリアリティの評価を実施するにあたり、ESRSに定められた主な要件を確認しておく必要があります。影響・リスク・機会を特定し、ガバナンス・リスク管理・戦略に関する全般的な必須開示項目への対応を進めるとともに、10基準に沿って開示すべき内容を明確にしていくことが求められます。
全ての開示内容は、企業の年次報告書に記載することが義務付けられており、さらにマテリアリティ評価を含めた全ての内容に対して第三者保証を受ける必要があります。最初の数年間は限定的保証が求められますが、28年までには合理的保証への引き上げが予定されています。
なお、気候変動の基準については、特筆すべき点があります。それは、マテリアリティ評価の結果、自社にとって気候変動が重要でないと判断した企業は、そのような結論に至った「詳細な説明」を開示し、その根拠を示す必要があるという点です。また、温室効果ガス排出量に関して、ESRSはスコープ3を含めた開示を求めていますので、その点も留意する必要があります。
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