「シラコンバレー」の異名も 和歌山にIT企業が続々進出、なぜ?:未来の商機は地方にあり(4/4 ページ)
和歌山県に近年、IT企業が相次ぎ進出している。直近の約5年で20社が拠点を設置。企業誘致を本格的に始めた2001年当初は、誘致に成功しても長続きしないケースもあったという。県は過去の反省を生かし、どのように改善を進めていったのか。
競争激化……北海道や沖縄と勝負するためには
さまざまな手を打つことで、徐々に軌道に乗り始めた企業誘致。一方で、コロナ禍をきっかけに、密を避けられる地方でのワークスタイルに注目が集まり、企業の地方移転の機運も高まった。こうした中で、全国で企業誘致の競争が激しくなっている。
県と白浜町はコロナ禍前の17年度から全国に先駆けて、リゾート地で働きながら余暇を楽しむワーケーションに注目。都市部の企業に働きかけ、これまでに285社2525人がワーケーションを体験したという。
県がワーケーションを推進してきた背景には、人口減少が続く中で、「定住人口」ではなく、地域に継続的に関わる「関係人口」を増やす目的があった。また、地方移転のハードルを下げ、まずはワーケーションを通じて、企業側に県内を知ってもらう意図もあったという。実際に、ワーケーションを体験したことをきっかけに、県内に進出した企業もあったと西山さんは話す。
とはいえ、ワーケーションも全国的に浸透。他との差別化を図るのは容易ではない。
「これからは、なぜ白浜なのかが問われる。白浜なら、こんなにユニークな人がいて、一緒に地域課題を解決できる、そう思ってもらえるようなプラットフォームを構築していかなければ、北海道や沖縄県といった人気の自治体に太刀打ちできない」と鎌谷さんは話す。
近年は地方に進出を検討する企業側の目的も変化しつつある。コロナ禍前は、安い立地条件を求める企業が多かったが、コロナ禍後は「人材確保を目的として地方進出を目指す企業が増えている」と西山さんは話す。
県に進出している企業の場合、マネジメント層をはじめとするコア人材の確保に苦労しているケースが多いという。県としては今後、中途採用やUターン、Iターン採用を確保していくことが当面の課題だ。県に進出することのメリットを企業側にいかに訴求し、人材が確保できる環境を構築できるかが、今後、企業誘致の成功を左右することになりそうだ。
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