“キラキラ若手”が会社を辞める3つの要因(2/3 ページ)
就業者の幸せな活躍にとって重要な社会へのエンゲージメントを「ソーシャル・エンゲージメント」という。このソーシャル・エンゲージメントという概念を用いながら、若者の仕事意欲の低下や離職リスクなどについて解説する。
若者のソーシャル・エンゲージメントはなぜ下がるのか
34歳以下の若年層に絞って、ソーシャル・エンゲージメントにマイナスの関係を持つ仕事経験を分析した。すると、仕事における3つの要素が、人の社会への志向性を奪っているような様子が見られた。
その要素の1つ目は、仕事における「貢献感の欠如」だ。これは、「会社の利益だけを出す仕事だ」「直接人から感謝されにくい仕事だ」といった貢献実感のなさである。2つ目に、「他人を傷つけたり、軽んじたりすることがある仕事だ」「人をだましている気になることがある仕事だ」という「他者軽視感」である。3つ目に、「今の仕事は自身の成長につながっていない」「遠くない未来に不要になる仕事だ」といった「無成長実感」である。これらの3つが、若者のソーシャル・エンゲージメントにマイナスの関係が見られたのだ。
また「貢献感の欠如」と「他者軽視感」の一部は、入社してすぐに特に強く感じられているという傾向も見られた。社会的志向の高い若者が、ビジネスの貢献実感のなさや他者を軽視した仕事の在り方に気が付き、学生時代からのリアリティー・ショックとして経験されている可能性が高い。
人類学者デヴィッド・グレーバーは、著書『ブルシット・ジョブ』において、全くやりがいの感じられないようなムダで無意味な仕事=ブルシット・ジョブが社会で増えているということを指摘している。グレーバーの表現を借りれば、現代はこうした「どうでもいい仕事」が蔓(まん)延する一方、本当に役に立つ仕事は低賃金で搾取されるという倒錯が起こっているという。
ここで若年層に見られたこの3つのネガティブな要素は、まさにグレーバーが喝破した「どうでもよさ」を、就職後の若者が感じてしまっている例である。実際にこの3つの要素は、就業者の社会変化への諦め感(達観視・無力感・無関心)を上昇させており、そうした諦念感が、ソーシャル・エンゲージメントの低下につながっていることが判明している。
「今の仕事」が社会貢献へとつながるかが鍵
先ほどのデータが示すのは、ソーシャル・エンゲージメントが高くても、今の仕事が社会貢献へとつながっている実感がないのであれば、人は社会への関心を低減させていくということだ。つまり、ソーシャル・エンゲージメントだけが高いのではなく、現状の仕事とつながっていなければいけないのだ。
この事態は、ソーシャル・エンゲージメントにもう一つのコンセプトを組み合わせることでより見通しの良い議論が可能になる。われわれは、こうした「今の会社での仕事が、社会貢献に何らか関連しているという実感」のことを、「ソーシャル・レリバンス」と呼んで測定した。レリバンスとは、「関連」や「意義」といった意味をもつ言葉だ。詳しい項目は下記に図示する。
このソーシャル・エンゲージメントとソーシャル・レリバンスの2つを組み合わせ、高低を組み合わせて4群に分けて分析すると、最も企業で活躍しウェルビーイングが高いのは、ソーシャル・エンゲージメントが高いことに加えて、ソーシャル・レリバンスも高い群(共に高い層)である。高い社会への志向性からパフォーマンスを引き出そうとするのであれば、具体的な仕事と社会貢献へのつながりを実感することがやはり有効だということである。
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