EVシフトで「トヨタは遅れている」は本当か:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
世界的なEVシフトの中、エンジン不正が騒がれているトヨタグループ。日本は本当に世界から遅れをとっているのだろうか、それとも……。
日本の自動車メーカーは「遅れている」のか
筆者はこれまで不正を起こした企業の謝罪会見を山ほどサポートをしてきたが、トップが語ったことなどほとんどまともに取り上げられることはなく、厳しい批判がなされるケースが圧倒的に多い。それが、トヨタに関してはダイハツの時にでた「裏切られた」「早く潰れろ」「ブラック企業」「解体的出直しを」なんて苦言はほとんど聞こえてこない。構造的にはディーゼルゲート事件を彷彿(ほうふつ)とさせる悪質性だが、そこを指摘する人も少ない。
なぜこんなに露骨に優しいのかというと、日本人にとってトヨタは「希望」だからだ。かつて日本のお家芸と言われた自動車産業が「EVシフト」によって急速に存在感を失って、BYDなど中国メーカーが台頭してきている中で「一発逆転」が狙えるのはトヨタしかいない。
以前の記事「SDGsを発明した人は本当に頭がいい、皮肉な理由」でも詳しく解説したが、西側諸国が主導する「SDGs」だとか「カーボンニュートラル」は基本的に、自国のエネルギー戦略や基幹産業が有利になるように「ゲームのルールを変える」ことをしているに過ぎない。
「EVシフト」に関しても先ほど紹介したように、クリーンディーゼル路線が頓挫してしまった中で、欧州メーカーが有利にビジネスを進めるために急ごしらえした「ルール変更」に過ぎない。欧州メーカーのEVより安くて品質の良い中国産EVが欧米市場を席巻したら、欧米は再び手のひら返しで「なんかEVって時代遅れだよね」なんてあっさりルールチェンジをする恐れもある。
そういう狐と狸の化かし合いのような世界で生き残っていける日本メーカーの代表が「全方位戦略」を掲げるトヨタだ。だから、われわれ日本人は気付かぬうちに、メディアも専門家も一般ユーザーも一致団結をして「トヨタ推し」に流れているし、トヨタの不正も「温かく見守る」というスタンスになってしまう。
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