KDDIがローソンを選んだワケ 異業種タッグでコンビニはどう変わる?:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
通信大手KDDIが、ローソンに対し株式公開買い付け(TOB)を行うと発表した。なぜローソンなのか。異業種タッグで、コンビニはどう変わるのか。
日本のコンビニエンスストア業界は、新たな変革の時を迎えている。特に注目されるのが、業績好調のローソンが通信大手KDDIによる株式公開買い付け(TOB)の対象となったことである。
このTOBにより、KDDIと三菱商事はローソンの株式を共同で保有することになり、結果として三菱商事とKDDIがそれぞれ約50%ずつの出資比率となる予定だ。KDDIが株式取得のために用意する金額はおよそ5000億円とされている。
アフターコロナにおけるローソンの復調は目覚ましいものがあり、2023年2月期には国内コンビニ事業が特に好調だった。売上高は前期比41.6%増の9886億円で最終益は同37.9%増の246億円と大幅な増収増益となった。
そして24年2月期第3四半期の累計(3〜11月)でも、前年同期比48.8%増の458億円に拡大し、すでに前年の最終益を上回っている。今期の通期における連結業績予想では、ローソンの売上高は史上初の1兆円超えも射程圏に入っており、最終益も23年の倍となる500億円を見込む好調ぶりだ。
KDDIからすると、単純な投資の側面からいっても「お得」な買い物であったのかもしれない。しかし今回のTOB、投資としての側面にとどまらない変化があるようだ。
TOBでローソンはどう変わる?
KDDIによるローソンのTOBは、単純な投資という側面だけでなく、自社の販路や既存ビジネスとのシナジーを掛け合わせた戦略もうかがえる。
従来のコンビニ業界は、小売から派生した宅配サービスや印刷、銀行ATMといった分野で日常生活のカバー率を拡大してきた。
近年では、モバイルバッテリーやライドシェアサービスなどにも積極的で、都市におけるコンビニの役割は年々広くなってきている。
将来的には、KDDIのスマホ窓口を設置するほか、auショップでのローソン商品を取り扱うなどの既存ビジネスにおけるシナジーを見込むほか、「クイックコマース」と呼ばれるネット経由での注文を近隣店舗から迅速に届ける新業態にも参入する方針という。
クイックコマースを巡っては、22年に業界の先鋒だった「QuickGet」の運営スタートアップ企業が破産するといったトラブルもあった。しかし、潤沢な販路と資金力、そしてアプリ上のユーザーベースを誇るKDDIとローソンの組み合わせは、クイックコマースの文化を根付かせるのではと期待される。
今回の統合が成功するカギは、KDDIの通信技術やデータ分析能力と、ローソンの物流・小売業界での豊富な経験とネットワークが、相互に補完し合う形で活用されることだろう。
近年ではXやLINEなどのアプリで日常生活が完結するといった「スーパーアプリ」構想が話題となっているが、KDDIと三菱商事、ローソンは「スーパーコンビニ」を目指しているのかもしれない。
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