KDDIがローソンを選んだワケ 異業種タッグでコンビニはどう変わる?:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)
通信大手KDDIが、ローソンに対し株式公開買い付け(TOB)を行うと発表した。なぜローソンなのか。異業種タッグで、コンビニはどう変わるのか。
KDDIはなぜローソンを選んだ?
KDDIは、なぜローソンの株式を購入しようとしたのか。2月6日に行われた会見によれば、ローソン株主の三菱商事側が、自社だけでローソンの企業価値を高められるか悩んでいたことがきっかけであるという。
上場コンビニ企業を見渡すと、業界2位のファミリーマートがユニーと統合したのち、20年に伊藤忠のTOBを受けて上場廃止するといった統廃合の動きもあった。とすると、KDDIが仮に全国的なコンビニチェーンと組むとした場合、独立資本系のセブン・アンド・アイHDを除けばイオン系の「ミニストップ」か「ポプラ」ということになる。
しかし、ミニストップの時価総額は469億円とローソンの規模と比較して5%ほどしかない。また、ポプラの時価総額も38億と小粒であり、そもそもポプラの外部筆頭株主はローソンである。ローソンを手に入れればポプラのガバナンスにも参画できる状態だった。
このような背景を踏まえると、国内コンビニチェーンの中でKDDIと実効的に組めるのは、以前からも協力関係にあったローソン以外になかったといっても過言ではない。
日本国内のコンビニ市場の成熟度を考えると、成長の鍵は地域社会への浸透と海外展開にあるだろう。競争の激しいコンビニ業界において本業部分についてもKDDIの強みが発揮されるかに注目が集まる。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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