BM、ダイハツ、豊田織機……組織が悪事に走る根本原因:働き方の見取り図(3/3 ページ)
有名企業による不祥事が後を絶たない。不正行為の繰り返しを防ぐには、会社組織に内在する根本的な原因に目を向ける必要がある。
社会より「会社」の都合を優先する愚
誰しもが、良心を持ち合わせています。そのため、不正行為に手を染めると罪の意識にさいなまれます。そんな時、上司たちから「罪の意識から逃れたいというのはキミのエゴだ」「不正が明らかになったら、会社や他の社員たちはどうなる?」「会社を守るためにどうするべきかよく考えろ」などと言われれば、真面目な社員ほど悩むことになりそうです。
そうやって「会社のために」と、自己犠牲の精神が言い訳の材料として利用されると“歪んだ正義感”が組織の中で醸成されます。そうなると「相談したとしても無駄」と口をつぐみ、不正行為を黙って受け継ぐという汚れ仕事が美化されるようになります。そして不正がバレても「運が悪かったな。でも、会社のためによく嫌な仕事を引き受けてくれた」などと称賛されることにすらなりかねません。
今回の一連の不正についても、社会にとって不利益でも会社にとって利益であれば良いという“歪んだ正義感”に染まった人たちは、心の中で「会社のために仕方なかった」という怖ろしい言い訳をして、自分たちを慰めている可能性があります。
会社は社会の公器と言われるように、会社は社会のニーズを満たすために存在しています。裏を返せば、会社が取り組む事業に対して社会からのニーズがなくなったら潔く事業をたたみ、別のニーズを満たすために尽力するのが会社のあるべき姿です。
それなのに、会社第一主義が行き過ぎて、会社が社会よりも大切な存在になってしまえば、不正行為が起きても何ら不思議ではありません。
社会に警察が必要なのは、犯罪から市民を守るためですが、もし世の中から犯罪がなくなれば警察は不要になります。なのに、警察を存続させることを目的化してしまうと、犯罪がなくなっては困るという本末転倒な発想につながりかねません。会社第一主義が行き過ぎると、同様に社会よりも会社の都合を優先するという発想になりえます。既に企業組織が起こしている数々の不正行為こそが、その証拠です。
不正行為を防ぐには、会社の利益と社会の利益を常に一致させておく必要があります。不正を行った会社が自らを社会よりも大切だと勘違いし、独善的なままでいたらどうなるでしょう。どれだけ真摯(しんし)に謝罪し、調査報告書を出したとしても“歪んだ正義感”に侵され続け、ほとぼりが冷めればまた不正を繰り返すことになるのではないでしょうか。
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