体育会系の営業職で成果出ず、転職の勇気もない どうしたらいいですか?:Q&A 働き方のお悩み相談
体育会系の営業職で目立った成果を出せず、転職にも一歩を踏み出しきれない。ワークライフバランスも重視したいが、お給料もしっかりとほしい……。働き方の専門家のアドバイスは?
新連載:Q&A 働き方のお悩み相談
働き始めて間もなく10年、中堅社員として責任ある業務も任されるようになった。さらなるステップアップを目指したいけれど、何をすればいいのだろう。仕事も大事だけれど、プライベートも大切にしたい――。
キャリアアップ、ワークライフバランス、リスキリング……どうすれば自分が納得できるキャリアを歩めるのか。中堅ビジネスパーソンが抱く悩みに、長年、多くの人の働き方を見つめアドバイスしてきたワークスタイル研究家の川上敬太郎さんが回答する。
Q:これまで不動産業界で営業職を続けてきましたが、体育会的な風土が、社交的ではない自分には合わないようで、目立った成果を出せませんでした。異業種への転職も考えていますが、不安が勝り、一歩を踏み出しきれません。ワークライフバランスも重視したい一方で、お給料もしっかりとほしい……。アドバイスをいただけると幸いです。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
「焦って転職」よりずっと大切なこと 専門家の回答は?
A:焦って求人に応募する必要などありません。でも、既に第一歩は踏み出せているようです。
仕事をしていると、つらいことがたくさんあります。また、そのつらさの度合いや理由もさまざまです。仕事自体は好きでも職場の雰囲気になじめなかったり、その逆だったり。あるいは、仕事も職場も好きだけど、給与が物足りないということもあります。
不満や不安、さらには「こうだったらいいな」という希望を挙げていくと色々出てくるものです。それらをズラッと並べてみると、自分のワガママのように思えてしまうかもしれませんが、決してワガママなどではありません。不満を誰かのせいにして責めたり、感情的に振る舞って周囲に迷惑をかけたりしているわけではなく、ただ自分の抱えている不満や不安、希望を洗い出しただけです。
- 不動産業界は向いていないかもしれない
- 営業は向いていないかもしれない
- 職場の体育会的な風土が合わないかもしれない
- 目立った成果が出せていない
- ワークライフバランスも重視したい
- お給料もしっかりとほしい
これだけ理由があれば、転職が頭をよぎるのは自然なことだと思います。しかし、不安が勝って一歩を踏み出しきれないのもまた当然。転職活動してもよい仕事が見つかるとは限りませんし、転職できたとしても、いまよりもっと環境が悪くなる可能性だってあるかもしれないのですから。
しかし、実は相談者さんは既に一歩を踏み出しています。
転職する際の第一歩は、履歴書と職務経歴書を用意して求人に応募することではありません。それはもう少し後。まずは、自身の不満や不安、希望などを洗い出すことです。ここが不十分なまま転職活動をしても「これでよいのかな」と迷い続けてしまうことになります。
その点、相談者さんは既に一歩を踏み出していますから、自分自身との対話をさらに重ねれば、他にももっと出てくるかもしれません。まずは、それら自身の本音としっかりと向き合うことが何より重要です。その上で、整理した不満や不安が払拭され、希望がかなった状態をイメージしてみてください。
- 不動産以外の業界で仕事する
- 営業以外の職種に就く
- 文化系の風土の職場で働く
- もっと成果を出して活躍する
- ワークライフバランスがとれる
- 満足できるだけのお給料がもらえる
これらを満たす転職ができた自分を想像した時、ワクワクしたり前向きな気持ちになるようなら、次はこれらの状態を実現できそうな求人があるか探してみてください。いまはスマホで簡単に求人情報を検索できます。
さらに、転職サービスのサイトなどに登録してみると、より詳しい情報や表に出ていない求人などを知ることもできます。そうやって情報が増えるほど自分にとっての最適解がイメージしやすくなり、転職活動は着実に前に進んでいきます。
その結果、逆にいまの環境の良い点に気付き、転職せずもう少し頑張ってみようという気持ちになることもあります。それなら、それでいいのです。決して転職が最適解だとは限りません。
転職活動でこれらの小さな一歩を重ねず、いきなり大きな一歩を踏み出すのは、むしろ危険です。大切なのは、半歩ずつでよいので前に進みながら、自身が納得して選択できるようにすること。まずはとことん、そのために必要な情報を集めてみてはいかがでしょうか。
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