売れ続けるマツダ「ロードスター」 あえてフルモデルチェンジしない理由:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
売れ行きが好調なマツダ「ロードスター」。前回のフルモデルチェンジから約9年が経過する中、マツダがあえて商品改良したのには、ある理由がありました。
大ヒットした初代ロードスター
ところが、89年に発売された初代ロードスターは大ヒットを記録します。予約のために、ディーラーに徹夜で並ぶ人の列が生まれるほどの人気ぶり。翌90年には年間販売2万5226台の記録を達成したほか、海外ではさらに多くの台数が売れました。
大ヒットの要因としてはまず、価格が挙げられます。ロードスターの価格は、当時200万円を切っており、スポーツカーにしては安価でした。その一方で、走りの楽しさやデザイン性は高級スポーツカーにも引けを取りません。また、絶滅危惧種だったため、ライバルとなるクルマがいなかったこともプラスに働きました。
ロードスターのヒットを受けて、後日、BMWの「Z3」(96年発売)、ローバー「MGF」(95年)、フィアット「バルケッタ」(95年)など、数多くのライバルが登場します。ロードスターの登場は、80年代に絶滅危惧種だった幌の2人乗りオープンカーが復活するほどのインパクトを世界に与えたのです。その後の日本の経済停滞期もロードスターは生き残りました。コロナ禍でも、98年以来となる年間1万台に迫る販売台数を記録し、安定した人気ぶりです。
アップデートしたロードスター
そんなロードスターは、昨年10月に商品改良を実施しました。マツダいわく「大幅商品改良」と呼ばれるその内容は、非常に多岐にわたります。2015年の現行型登場からでは最大の改良です。
最も重要となるのが、電気・電子プラットフォームが一新されたこと。近年のクルマは、全てが電気で制御されています。その制御の大本を一新したのです。言い換えるなら、PCのOSがアップデートしたようなもの。外からは見えませんが、非常に大きな進化を遂げたのです。
その結果、ロードスターに「レーダークルーズコントロール」(定速走行・車間距離制御装置や全車速追従機能などと呼ばれる運転支援機能)が追加されました。エンジンと電動パワーステアリングの制御がより緻密になる、新しいサーキット専用モード「DSC-TRACK」(MT車のみ)を搭載するといった、電子制御系で多くの進化が見られます。
メカニズムとしては機械式LSDの「アシンメトリックLSD」を採用(ロードスター「S」を除くMT車のみ)し、駆動系を強化。これにより、限界域での走行性能が高まっています。「マツダコネクト」のセンターディスプレイの画面が大きくなっているのも外せません。
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