「トヨタグループ」連続不正への提案 なぜアンドンを引けなかったのか:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/8 ページ)
2022年の日野自動車を皮切りに、4月のダイハツ工業、明くる1月の豊田自動織機と、トヨタグループ内で不祥事が続いた。立て続けに起こった不正はなぜ起こったか。そして、その原因を考えていくと、トヨタにはこの問題を解決できる素晴らしいソリューションがあるではないか。
「無理もモチベーション理論」
しかし、とここから疑問と反論を展開する。対症療法としての効果については大いに期待するのだが、これがそもそも問題の真因解決なのかという点には疑問がある。企業経営において生産性の向上は極めて重要である。リーダーシップ理論の基礎の基礎であるマネジリアル・グリッド理論では、リーダーの関心は「人への関心」と「業績への関心」の2つをバランス良く見ることだとされており、どちらか一方に傾くとマネジメントは破綻する。
徹夜で本を作った時、筆者は確かにキツかったけれど、そこには大きな達成感があった。仕事の喜びがそこにある。それは社会人なら多かれ少なかれ感じたことがあるはずだ。そしてトヨタがいう「モータースポーツからのクルマづくり」もまさにそうで、レース開催日までに開発を終えなければ開発の意味が失われる。レースの翌週になってスゴい性能の車両ができ上がっても無価値である。
業績を上げようと思えば、どうしたってそこに無理は生じる。その無理をさせてあげることも「人への関心」ではないかという、常識はずれのことを筆者は今主張している。
その仕事の高揚感を全面的に無視した時に、働く人たちのモチベーションは続くのだろうか? 善悪の話を置いて、例えば会社に内緒で休日出勤してプロジェクトを進めている時、そこには自分しか知らないヒロイズムが確実にある。そういう人間の心理を全部無視して、働き方改革の正義だけを推し進めることが、本当に働く人にとって、そして企業にとって良いことなのか、筆者は疑問を呈したい。
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