「スタジアム」のようなオフィス サイボウズが広島進出で得たメリットとは?:訪問してみた(3/3 ページ)
クラウドサービス「kintone」などを提供するサイボウズが23年7月に新設した広島オフィス。オフィスのコンセプトや、開設によって生まれた営業効率だけではないメリットとは。
新オフィス開設で自社セミナーなどが激増
新しい立地が決まったことで、取り掛かったのはオフィスのコンセプト作りだ。
「当社の人事部門にはオフィス関連を管轄するワークプレイスチームがあります。そのチームと現地のメンバーとでワーキンググループを作り、話し合いながら進めていきました」
実際に働く人たちがこんなオフィスにしたいという思いを最優先に、22年秋頃には先述したスポーツやチームワークをテーマにしたデザインコンセプトが固まった。特に紛糾することもなく、すんなりと決まったそうだ。
機能面では、レンタルオフィスでの不便を解消するために、会議室やテレフォンブースを設けるなど、多様な働き方に合わせたファシリティの整備を目指した。加えて、従来はかなわなかった自社オフィスでの研修やセミナーを開催できるような環境も重視した。
結果的にこれが新オフィスにおける大きな成果となった。今までは出張ベースだったため、場所を借り、しかも年間で数回しか開くことができなかった。しかし、現在は毎週何かしらのリアルイベントが行われるようになったのだった。
さらに、パートナーとのコミュニケーションを図る上でも、この場をフル活用している。
「パートナーの皆さんに対して当社サービスのセールスポイントをお伝えするレクチャーをしたり、マネジャークラスの方にお越しいただいて、一緒に施策をディスカッションしたり。以前は回数が限られていて親近感が薄かったですが、今はリアルの場で直接対話ができるようになりました」
また、研修や商談だけでなく、エンドユーザーなどを招いたオフィス見学会も実施。そこで実際に職場の様子や働き方を見てもらうことで、先々のビジネスにつながることもあるという。
なお、働き方改革に関しては、サイボウズは先進的な会社として知られている。そのノウハウを広めるべく、広島県と連携して県内企業に対するコンサルティングを実施した実績もある。従って、エンドユーザーの相談に乗って働き方のアドバイスなどをすることもしばしば。
新オフィスは本業以外での使い道も増えている。最近では開発メンバーが地元・広島のエンジニアを集めたミートアップイベントを開催するなど、徐々に広島のコミュニティースペースにもなりつつある。
「オフィスを構えるということは、短期間で撤退するわけではなく、この地域に根ざしてビジネスをしていく覚悟の表れです。だから、5年、10年と長いスパンで物事を考え、広島および中国地方に根を張った活動をしていきたい思いがあります」と西尾氏は力を込める。
広島初のユーザーイベントも
オフィス開設によって効率的な事業活動ができるようになった。数字は非公開というが、広島を中心とする中国地方のビジネスパートナーは計画通りに増加していて、エンドユーザーの裾野も広がっているとのこと。
営業上の目下の課題は、導入社数と並行してユーザー数も追わなければならない点である。
「われわれはユーザー課金のビジネス体系をとっていますので、5人の会社で5ユーザー分買っていただくのと、1000人の会社で5ユーザー分導入いただくのは、売り上げだけ見れば同じです。kintoneは1部署からスモールスタートできるのが大きな強みである一方で、組織全体で使えるサービスでもあります。導入企業に対する追加提案や活用促進をもっとしていかなければなりません」(西尾氏)
同社の年次ユーザーイベント「kintone hive」が、今年初めて広島でも開かれることとなった。中国地方の重要な拠点として、また地元に広く開かれたコミュニティーの場として、より一層、新オフィスからの情報発信を強めていかねばならないと気を引き締める。
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著者プロフィール
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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