SNSが捉えた能登半島地震 進化する「企業防災」の形とは:企業が備えるBCP(4/4 ページ)
災害時、自社の被害を最小限に抑えて初動対応を取るには、正確な情報収集が欠かせない。多発する自然災害に、今後、企業はどう備えるべきなのか――。報道テックベンチャーのJX通信社代表取締役、米重克洋氏に寄稿してもらった。
企業はいかに備えるべきか
従来はデマやフェイクニュース対策として、人的なファクトチェックの取り組みが称揚されていた。だが現実には、こうした人海戦術的アプローチは早晩通用しなくなる。構造的に、デマやインプレゾンビの投稿は指数関数的に増えるにもかかわらず、ファクトチェッカーの担い手はそもそも増やすことすら難しいからだ。今ですらSNSにはデマが溢れかえっており、そのほとんどは野放しのまま放置されている。その量の凄まじさに、プラットフォームでさえ全く太刀打ちできていないのに、今後はより量で圧倒されるのだ。
人間には、デマを見抜けなくなる時代が来る。デマはAIで生成され、そのデマを見抜くのもまたAIの仕事になるのだ。
これからSNSを情報手段として活用しようとする企業は、そうした観点も伴った備えが必要になっている。SNSは災害時の情報収集において間違いなく有効だが、一方で情報空間としてはかなり荒れていることも事実だ。触らずに避けることはもはやできない以上、有効な対策をとって活用するほかない。
もちろん、課題がある以上、その対策もある。例えば、冒頭でも紹介した防災DXツールの「FASTALERT」は、開発当初からAIによる解析を重視している。元々、報道機関がニュースの「視聴者提供」映像や事件、事故などの情報を収集する目的で開発されたツールであるだけに、長年のデマ・フェイクニュース対策技術、ノウハウの蓄積が効いている。
加えて、最近では全国の自治体と連携して、災害や設備損壊などの一次情報をアプリなどから独自に収集する取り組みも進めている。アプリなどから位置情報や端末の情報などとともに取得した写真や動画は、その真贋(しんがん)をチェックしやすい。
次なる災害に備えて企業ができることは何だろうか。情報手段の観点では、やはりSNSを通じた情報収集のプロセスを防災・減災対策や事業継続のために取り入れておくことは第一歩だろう。だが、それを超えて多重的な情報収集手段を平時から確保しておくことや、大規模災害でも正確な情報をもとに即応できる業務フローになっているかどうかも改めて点検することが必要だ。
災害対策においても、SNSという情報空間の「光と影」を認識した上で、光を生かし影を打ち消す活用法が求められている。
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