サントリー「天然水」 ブランド名統一の裏に、地震の教訓:企業が備えるBCP(1/3 ページ)
サントリーは、BCP対策の一環として20年11月、それまで地域ごとに異なる商品名をつけていた天然水を「サントリー天然水」という名称に統一した。なぜ、自然災害に備えて商品名を統一する必要があったのか。
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地震などの災害が発生した際に、真っ先に品薄になる商品といえば、何を思い浮かべるだろうか。自然災害の発生時に、ある商品のニーズが急増することを示す数字がある。
東日本大震災が起きた2011年3月の出荷は、前年同月比146%。熊本地震が起きた16年4月は、同130%。大阪府北部地震や西日本豪雨が起きた18年6〜7月は、同118%――。
これは、サントリー食品インターナショナルのミネラルウオーター「天然水」の出荷前年比の数字だ。今や生活必需品となっているミネラルウオーターは、自然災害の発生時には「命の水」となる。年始に発生した能登半島地震でも、被災地では断水による水不足が発生し、店頭では食料品などとあわせて、飲料水が品薄になった。
インフラとしての安定供給が求められる水は、災害で供給がストップするような事態となれば、社会に大きな影響を及ぼす。万が一、自社工場などが被災しても損害を最小限に抑え、事業継続または早期復旧ができるよう、各社はBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策を講じる。
サントリーは、BCP対策の一環として20年11月、それまで地域ごとに異なる商品名をつけていた天然水を「サントリー天然水」という名称に統一した。なぜ、自然災害に備えて商品名を統一する必要があったのか――。
熊本地震で工場が被災
16年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方をマグニチュード(M)6.5の地震が襲った。16日未明には、本震となるM7.3の地震が発生し、同県益城町や西原村で震度7を観測。九州地方の各県でも強い揺れを観測した。
03年に稼働したサントリー九州熊本工場が建つ同県嘉島町は、14日の前震と16日の本震でそれぞれ震度6弱、震度6強の揺れを観測。同工場は、前震から操業を停止した。
同工場は、阿蘇山の伏流水の湧水を原料として、主力ビール「ザ・プレミアム・モルツ」やペットボトル飲料「サントリー 阿蘇の天然水」(当時)を生産。この地震で、生産設備や配管が損傷し、被害総額は約111億円に上った。
その後、復旧作業を急ピッチで進め、ビール商品は同年12月以降、出荷を再開するが、「阿蘇の天然水」は17年9月の販売再開まで、約1年5カ月を要することとなった。
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