緊急時は“初動”が問われる いま経営層に必要な「リスクセンス」とは:企業が備えるBCP(1/2 ページ)
災害対策には、平時からの想定が大切なのは言うまでもない。加えて、災害発生直後にどの程度のリカバリーが必要なのかを瞬時に把握する「リスクセンス」も欠かせない。
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能登半島地震は、元日という多くの人にとって想定していない状況で発災した。事故や災害は時を選んでくれない。24時間365日、どこで起きるかは予測しようがないのだ。突如として発生した事態を号砲として、世の中が日常モードから災害モードへ瞬時に切り替わった。
被災地では多くの人がパニックに陥り、正しい状況判断が困難になる。いわゆる「失見当」と呼ばれる心理状態である。一方、被害が軽微あるいはない地域では、大半の人がテレビ画面を見るだけの傍観者となる。
その傍観者だった人も2、3日がたつと、被害の全体像が徐々に明らかになり、地震の影響が自らに及んでいることに気付き始める。企業の経営層や管理職といった、事業継続に責任を持つクラスの人たちだ。
「被災地の出身だった社員と連絡がつかない」「旅行にいった社員の安否が不明」「被災地に自社の取引先があり、被災して今後の見通しがついていない」――。リーダーが後手後手に放つ言葉に組織の統率力は崩れ「わが社は危機に弱い」というトラウマが社員の心の中に刻み込まれる。
不測の事態に直面した際の“初動”を左右するのは「リスクセンス」――リスクの規模・危険性を迅速に察知する判断能力だ。
リスクを正しく、即座に把握せよ
帝国データバンクが1月19日に発表した「能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケート」によると、能登半島地震による自社の企業活動への影響について「影響がある(見込み含む)」企業は13.3%。「北陸」では43.2%に上る。日本海側の半島沖で起きた地震が、まさか自社に影響するとは考えてもみなかった企業が多いのではないか。
突然の危機を前に、冷静に判断するために重要になるのは、孫子の兵法に出てくる有名な一節「敵を知り、己を知る」ことである。今回の地震でいえば、敵は地震だ。能登地方のごく浅い場所で、地震の規模を示すマグニチュードは7.6、地震の揺れの強さは最大震度7を志賀町と輪島市で観測した。この数字を見て何を思い描いたか。
まず震度7という数字を見てかなり大きいと気づいた人は多いだろう。日本の地震は、震度0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10階級で7は最も強い。ちなみに1995年の阪神・淡路大震災以降、震度7を観測したのは2011年の東日本大震災、04年の新潟県中越地震、16年の熊本地震(2度の震度7)、そして18年の北海道胆振東部地震の5回だけである。
「東日本大震災」に次ぐ規模だと理解していたか?
しかしそれ以上に注目すべきはマグニチュードだ。マグニチュードは地震の規模を数値で表した指標である。マグニチュードが1違えばエネルギーは32倍も変わる。図で表すと下記のようなイメージだ。
気象庁仙台管区気象台が、子ども向けに地震について解説している「震度とマグニチュード」というサイトには、「マグニチュードは1大きくなると32倍大きくなり、2大きくなると1000倍になります。つまり、マグニチュード8クラスの地震は、マグニチュード6クラスの地震の1000個分のエネルギーがあることになります」と分かりやすく説明されている。
今回のマグニチュード「7.6」という数字は、阪神・淡路大震災以降、東日本大震災(マグニチュード9.0)に次ぐ2番目に大きな数字である。熊本地震がマグニチュード7.3程度だったことを考えれば、単純に計算して熊本地震の3倍近いエネルギーが放出されたことになる。
しかも震源は「ごく浅い」と報じられた。「地震が起きた後だから、勝手なことがいえる」と思われるかもしれないが、地盤の隆起や液状化などまで詳細に被害を予想することはできないにしろ、震源の位置やマグニチュードの情報だけでも、相当大きな被害が発生しているはずだという感覚を持たなくてはいけないということだ。それがリスクセンスである。
次に考えるべきことは、己を知ること。地震の揺れは、地震の規模と震源からの距離、さらには地盤で決まる。「自社の関連施設や取引先は、北陸にあるだろうか」「実家が北陸にあり、帰宅している人はいないだろうか」。こうした自社の状況を即座に頭に描くことが大切だ。
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