サントリー「天然水」 ブランド名統一の裏に、地震の教訓:企業が備えるBCP(3/3 ページ)
サントリーは、BCP対策の一環として20年11月、それまで地域ごとに異なる商品名をつけていた天然水を「サントリー天然水」という名称に統一した。なぜ、自然災害に備えて商品名を統一する必要があったのか。
「災害対策本部」の立ち上げ訓練も
飲料だけでなく食品や外食など複数の関連事業を有するサントリーグループは、内閣府が「事業継続ガイドライン 第1版」を策定した05年からBCPの基本方針の策定に着手した。
生産拠点のほか、原材料調達や物流、営業活動でのBCP対策を策定するほか、有事の際の本部機能、インフラの分散などを継続的に図っている。
グループ従業員の安否確認を迅速に行うため、各自の携帯電話、PCなどの連絡手段を使った安否確認システムを運用。年に2回、安否確認訓練を行うほか、大規模地震を想定した防災訓練や、徒歩による帰宅訓練なども定期的に実施しているという。
大規模災害の発生に備えて「災害対策本部」の立ち上げ訓練も実施する。発災時は、サントリーHD総務部やサントリー食品インターナショナル食品CM本部を中心に、グループ全体を統括する「対策本部」を設置。その下に各部門別の対策チームを配置して初動対応を行う――といった体制で有事に備える。
初動対応では、従業員や家族の安否確認、被害情報の収集・整理のほか「事業所機能復旧」「情報システム復旧」などを主導する。コロナ禍以降、テレワークが広がった現状を踏まえて、対策本部もリモート対応の整備を進めているという。
91年に誕生したミネラルウォーター「天然水」は、18年以降、国内の販売数量第1位の清涼飲料ブランドに成長した。自然災害が多発する昨今、社会インフラともいえる商品を扱う企業の社会的役割は、年々増す一方だ。社会の情勢に合わせて自社のBCPを不断に見直し、有事に備える心構えが、業種を問わず全ての企業に求められている。
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