営業現場はどう変わる? 未来のAI活用
次に、技術の進歩の先に実現が見込まれるAIの活用方法についてご紹介します。
顧客の動きをシミュレートし、将来に起こる事態を先読み
AIは、人間よりも多くのデータと異なる変数を踏まえた上で、物事の因果と相関を学習可能です。そのため顧客の行動をシミュレートし、次にどう動くかを予測する機能が将来的に出てくる可能性が言及されています。「顧客のデジタルツイン」とも呼ばれ、自社で設定した顧客ペルソナや、オンラインとオフライン両方の顧客とのやりとりを含むさまざまなソースからのデータに基づいて、現実の顧客をシミュレートする技術です。
営業活動においてこれを活用することで、顧客が最も製品・サービスに興味のあるタイミングでアプローチをかけたり、解約のリスクが発生する前に諸問題の解決に動いたりと、いわば未来に起こりうる事態を先読みして動くことができるようになる可能性があります。
デジタルヒューマン
人間と対話できるAIアバターの「デジタルヒューマン」が営業活動において活用される可能性も見込まれます。
現在、デジタルヒューマンはチャットボットやデジタルアシスタントのような言語によるコミュニケーションに加え、顔のジェスチャー(ウインク・うなずき・眉をひそめるなど)の非言語的合図を介して会話ができるようになっています。
Gartnerのレポート(※2)では、26年までに「B2Bにおける買い手の半数が購買プロセスでデジタルヒューマンとやりとりをするようになる」と予測しています。実際に以下のデジタルヒューマンが話している動画を見ると、説明がなければ生身の人間が話しているとも受け取れるレベルで人間らしい会話が実現しています。
※2:Gartner Identifies 7 Technology Disruptions That Will Impact Sales Through 2027(Gartner 、2022/10/10)
AIによるオペレーション管理
AIが必要なタスクの洗い出し・実行を自動で完了する世界観が実現する可能性も見込まれています。
過去の取引データや営業担当の活動履歴、顧客との合意事項、電子メールのメタデータ、顧客の行動データなどを組織的に蓄積。現在進行形で取引が進む案件におけるデータと照らし合わせることで、AIが案件ごとに何が起こっているのかを解釈し、営業担当が行う必要のあるタスクの判断、またその業務をAIが自動で実行する未来も考えられます。AIがデータ駆動で自動化する業務領域が拡張すれば、人間はより人間特有の活動、つまり創造的、情緒的、独創的な仕事に集中できるようになります。
AIがさらに知性を身に付け、これらの自動化が営業組織に定着すれば、人間に代わって高度な裁量権を持って営業活動に関わる未来は先の将来に起こりうる事象として十分に考えられます。
ただし、その時には営業に携わる人間が完全にAIに取って代わられているわけではなく、その役割が変化しているのではないでしょうか。Gartner(※3)は自動化される領域が拡張されても、人間の営業担当に依然として購買プロセスにおいて重要となる役割(人間関係の構築、顧客の微妙なニーズの特定、複雑な交渉の進行など)が残ると明言しています。
:※3:The One-Pager That Revolutionizes Strategic Planning(Gartner、2023)
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