人間にしか発揮できない価値とは?
人間の営業活動を「全てAIが代替する」わけではないのはなぜでしょうか? それは、優秀・万能に見えるAIでも、得意不得意を分解すると、明らかに自動化できる・できない領域があるからです。
AIは膨大なデータを分析し、その分析結果から最適解をサジェストしたり、多くの変数を踏まえた上で示唆を導き出すことには長けている一方で、社会性・共感性には弱い性質があります。そのため、定型化された通常の営業プロセスでは対処できない例外対応や、顧客との対話・交渉など高度な問題解決、人間関係の構築、顧客の微妙なニーズの特定など、「人間が介在した方が価値を発揮する部分」は残るというのが筆者の見解です。AIにより自動化される領域が拡張されても、人間の売り手だからこそ買い手に提供できる独自の価値は残り続けると考えています。
以前の記事で、多くの購入者が「営業担当が購買プロセスに関与しないこと」を好む傾向について言及しましたが、これは必ずしも顧客にとって購買体験の質が高く満足感のあるものになることが約束されているわけではありません。例えば製品理解が難しいB2B商材など、顧客自身が自力で製品やサービスの購入検討・導入を進めることが難しい商材を提供している場合は、営業担当が存在する意義が大きいです。また、購買層が変わるタイミングの対応の変化など、機知を働かせ介在価値を作る営業担当は、よりリッチな顧客体験を提供することができると期待されます。
Gartnerの調査では「購入が自分にとって正しい選択肢である」と感じられる場合には、買い手が決済規模を拡大する可能性が30%上がることが分かっています。また、購買プロセスに人間が関わることで買い手が納得感を感じる可能性が2.3倍高くなると明らかになりました。
商談のスピードを上げる、提案規模の拡大といった成果は、今日の営業の世界でも優秀な営業担当にひも付く特徴ではないでしょうか。企業が営業活動にAIを使用することが当たり前になる時代が到来し、生身の人間の存在が希少になればなるほど、営業担当に想像力や共感性が求められるようになり、AIが競合になるよりも人材の実力差が極端に表れると考えられます。
関連記事
- マネジャーはもう不要? 営業組織のAI活用で「人間の業務」はどう変わるか
- 生成AIの台頭で、日本から「外回り営業」は無くなるのか?
- 2年分のアポをたった半年で獲得、なぜ? TOPPANデジタルのインサイドセールス改革
- 「飛び込み営業」がついに死語に!? AIの台頭でくつがえる営業の常識
もしかしたら、AIの活用によって日本から飛び込み営業がなくなる日が来るかもしれない――。AIの台頭で営業の常識が変わりつつある今、時代遅れな方法はどんどん淘汰されている。今後の日本の営業活動はどう変化するのだろう……? - リードの40%が商談化するインサイドセールス「BDR」の立ち上げ方 8STEPをじっくり解説
- 「管理職になりたくない」 優秀な社員が昇進を拒むワケ
昨今は「出世しなくてもよい」と考えるビジネスパーソンが増えている。若年層に管理職を打診しても断られるケースが見受けられ、企業によっては後任者を据えるのに苦労することも。なぜ、優秀な社員は昇進を拒むのか……。 - リードの40%が商談化!? 米国式インサイドセールス「BDR」の実力とは
米国で注目を集めるインサイドセールス「BDR」をご存じだろうか? リードの40%が商談化するというデータも出ており、今注目を集めている。日本でも需要は高まるか。 - 鬼に金棒? オープンハウス「最強飛び込み部隊」が持つ“とんでもない地図”の正体
2023年9月期決算で「売上高1兆円」を突破し、話題を集めたオープンハウス。同社の「飛び込み営業」チームでは、“独自の地図”を開発し、効率的に営業活動を推進しているという。 - 優秀な営業マンにあえて「売らせない」 オープンハウス流、強い組織の作り方
- 「営業活動はSalesforceで全て完結」 ツール活用を100%社員に徹底させる方法
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.