AI時代、「人」が集中すべきこと
シドニー大学上級講師のマイク・シーモア氏は、「デジタルヒューマンは完全に人間に取って代わることはできない」と述べており、当面の間AIはあくまで人間の補佐役として活用が進んでいくのではないかと想定されます。
ただし、顧客体験の一部がAIに委任されることで、今後の技術進化によって営業活動がより精緻になっていくことは間違いなく期待できる将来であり、AIを自社の営業活動にうまく取り込み、競争力を上げていくことが営業のAI化時代に必要な企業戦略だと思います。
また、単純に考えれば、さまざまなテクノロジーが登場することで自動化・効率化が進み、顧客の購買体験における営業担当と顧客のやりとりがスマートに、シンプルになっていくことが予想されます。
一方で、人対人のコミュニケーションが減少する時代だからこそ、人間の介在自体が顧客体験における付加価値に昇華していくことも考えられます。ハイブリッドチャネルにまたがる顧客の購買体験を設計する中で、あえて生身の営業担当との接点を残す、といったデザインをすることもAIを味方につけた上手な戦法になりえるかもしれません。
AIが一般化していくこれからの世界においては、AIとの協業を前提に、人ならではの資質や創造性を強みとして、人が介在することで付加価値を高めることが求められるようになるでしょう。
作業は機械に任せ、営業担当は顧客の課題を捉えて、どのプランなら解決できるか、提案するならどのような方向から攻めるかを考える。このような「創造性が求められる提案」に時間を使い、人間だからこそ付加価値を生み出すことができる部分に集中することで、顧客体験の質を高める、理想の営業活動を作り上げられると思います。本連載が、AI時代の営業組織の在り方について考えるきっかけになれば幸いです。
筆者プロフィール:村尾 祐弥 株式会社Magic Moment
中央大学法学部卒業後、2社を経てGoogle Japan、freeeで営業部門の統括及び責任者として事業成長を牽引。2017年にMagic Momentを立ち上げ、2018年9月より経営を本格化。累計資金調達額20億円(DCMベンチャーズ、DNX Ventures、三井物産、ほか)。LINEやUSEN、凸版印刷等、多くのエンタープライズ企業の営業変革を人・テクノロジー・オペレーションの全方向から支援。2021年にローンチした営業AI行動システム Magic Moment Playbook はFwake、現在はエンタープライズ企業の生産性向上、LTV向上を非連続に実現している。
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