クルマの電気でレジ稼働 ファミマ、被災地店舗の営業再開への道:企業が備えるBCP
年始の大地震は、能登半島を中心に大きな被害をもたらした。石川県および北陸3県で最も店舗数が多いコンビニチェーンであるファミリーマートは営業再開に向け、どのように進んできたのか。また、平時からどのようなBCP(事業継続計画)を用意し、改善してきたのか。
年始の大地震は、能登半島を中心に大きな被害をもたらした。電源の供給の不安定化や道路状況の悪化で、多くの被災地域の企業活動が困難になった。
北陸3県で最も店舗数が多いコンビニチェーンである、ファミリーマートもその例外ではなかった。震災直後は北陸地方を中心に最大で約200店が一時休業するなど、大きな影響があったが、順次営業を再開。3月1日時点では、石川県輪島市と珠洲市の計4店を残すのみとなっている。
同社は営業再開に向け、どのように進んできたのか。また、平時からどのようなBCP(事業継続計画)を用意し、改善してきたのか。
北陸で最大の店舗数 ファミマ復旧を支えたBCP
内閣府が2022年に実施した調査(参考リンク:PDF)によれば、策定していたBCPが実際に役立った(「とても役に立った」「少しは役に立ったと思う」の合計)企業は全業種で約半数にとどまる。用意してあっても、機能しないのでは意味がない。重要なのはBCPの策定にとどまらず、訓練や実際の被災経験などを基に改善を重ね、有事の際に実効性を持たせることだ。
ファミリーマートでは、これまでの災害経験から、随時BCP計画をアップデートし、また大規模災害を想定した訓練を毎年実施してきた。
災害時、まず不足が懸念されるのは食料と水だ。同社では東日本大震災を受けて、天然水を自社で確保できるよう、13年に子会社であるクリアーウォーター津南(新潟県)でプライベートブランドの天然水の工場を設立。今回の地震でも、同工場から支援物資として出荷した。
サプライチェーンの強化だけでなく、各店舗の営業継続のための取り組みも進めてきた。近年では、19年に全店舗へ災害対応のマニュアルを配布。また20年からは、災害時における店舗への電源確保を目的に、全国に800台のガソリン発電機を設置している。平時は直営店に併設された倉庫や営業所の倉庫などに保管しているものだ。
災害時の電源として対応できるように、ハイブリッド車をBCP車両として、地域の営業拠点への配置を進めている。非常用の電源として使用可能で、全国で約900台を用意している。
今回の能登半島地震では、同社はどのような対応を取ったのか。発災直後に対策本部を立ち上げ、情報収集に着手した。同時に、営業の再開に向け本部社員を現地に派遣する応援体制を組み、地震の翌日には本部社員10人が現地入りした。
順次増員し、他地域からの応援を含めると最終的に約150人を派遣。店舗の清掃や整理、商品陳列など、迅速な再開に向けた売場復旧の支援の他、営業再開後にもレジ対応や商品の納品対応などの支援を実施しているという。
物流体制の早期復旧のため、道路状況で大型トラックが通行できないエリアにある一部店舗には、営業社員が社有車で商品をピストン配送する取り組みも行った。また停電地域では、現地社員が使用している社有のプラグインハイブリット車を非常用電源として活用。これをレジの稼働に用いて営業した店舗もあった。
店舗のタブレット端末やスマホを通じて、店舗と地域の担当スーパーバイザーからの情報を集約するシステムは、今回の地震においても被害状況や安否の確認などに活用された。同じシステムで、物流センターや中食製造工場の被害状況も確認できた。また、コロナ禍を機に構築したオンライン会議システムも、迅速な連携につながったという。平時のオペレーションの効率化は、災害時にも役立った。
ファミリーマートでは能登半島地震の対応についても検証を進め、BCP計画に反映する予定だという。各店舗の営業再開を進める過程で同社が得た学びは、地震大国で営業する約1万6000店舗をより強くしていくことだろう。
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