SNSが捉えた能登半島地震 進化する「企業防災」の形とは:企業が備えるBCP(1/4 ページ)
災害時、自社の被害を最小限に抑えて初動対応を取るには、正確な情報収集が欠かせない。多発する自然災害に、今後、企業はどう備えるべきなのか――。報道テックベンチャーのJX通信社代表取締役、米重克洋氏に寄稿してもらった。
2024年元日に能登半島を襲った、最大震度7の地震。時を選ばず起こる自然災害に、日頃の備えの重要性を痛感した経営者は多いだろう。
災害時、自社の被害を最小限に抑えて初動対応を取るには、正確な情報の収集は欠かせない。マスメディアの報道だけでなく、一般ユーザーがリアルタイムで発信するSNS情報は、いまや無視できないボリュームとなっている。
報道テックベンチャーのJX通信社(東京都千代田区)は、SNSなどのビッグデータからAIが検知したリスク情報を企業などに提供するSaaS型防災DXサービス「FASTALERT」(ファストアラート)を展開している。
FASTALERTは能登半島地震の被害をどう捉え、いかに企業防災に貢献したのか。多発する自然災害に、今後、企業はどう備えるべきなのか――。同社代表取締役の米重克洋氏に寄稿してもらった。
著者プロフィール:米重克洋(よねしげ・かつひろ)
JX通信社 代表取締役。1988年(昭和63年)山口県生まれ。聖光学院高等学校(横浜市)卒業後、学習院大学経済学部在学中の2008年に報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、国内の大半のテレビ局や新聞社、政府・自治体に対してAIを活用した事件・災害速報を配信するFASTALERT、600万DL超のニュース速報アプリNewsDigestを開発。選挙情勢調査の自動化ソリューションの開発や独自の予測、分析など、テクノロジーを通じて「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。他にAI防災協議会理事。
公式X:@kyoneshige、著書:『シン・情報戦略』(KADOKAWA)
2011年の東日本大震災を契機に、SNSは災害時の新たな情報インフラとして日本中に普及した。とりわけ、その代表選手たるX(旧Twitter)は、地震に限らずさまざまな災害の被害の実相をリアルタイムに、かつ精緻に把握する上で必要不可欠なものになった。
そのことは、はからずも今年元日に発生した能登半島地震で改めて実証された。
能登半島地震の被害もリアルタイムに可視化できたSNS
SNSなどのビッグデータから災害や事故などの情報をリアルタイムに可視化する防災DXツール「FASTALERT」の情報を見ると、1月1日午後4時10分、最大震度7の地震が発生した直後から、深刻な被害が広範囲にわたって生じたことが分かる。
早くも地震発生5分後には、石川県や富山県など各地で道路陥没などの被害報告が多発し始めた。そして、同7分後以降には家屋や神社など、建物の倒壊被害やそれに伴う停電の情報が多く検知されるようになった。
同26分後の午後4時36分以降は、石川県七尾市や珠洲市、輪島市など各所で家族や本人の救助を求める投稿の情報が相次ぐようになった。そして地震発生から1時間ほど後には石川県輪島市で火災の初報を覚知し、その規模が徐々に拡大していく様子も捉えられた。後に深刻な被害が注目されることになる、輪島朝市の大規模火災である。
主にSNS上のビッグデータを収集・解析するだけでも、幹線道路の不通や多数の建物の倒壊被害、それに伴う人的被害や火災など二次災害の発生といった事象をリアルタイムかつピンポイントに把握することができた。
FASTALERTを利用する企業の担当者からは「現地の拠点・サプライヤー付近の被害状況を報告前に把握して初動の対応を早められた」「揺れの大きかったエリアの拠点からの被害状況が自動でレポートされて助かった」といった声が多く寄せられた。
総務省の通信利用動向調査(令和4年版)によれば、ネット利用者に占めるSNS利用者の割合は60歳以上で7割超、80歳以上でも5割超に上っている。こうした動向も、高齢化率の高い地方でもSNSを通じた情報のやりとりが活発になり、結果として災害時の情報流通をより活発にしている側面がありそうだ。
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