明治「アポロ」は子どもだけのお菓子? 「大人になったら食べなくなる」をどう脱却したのか(3/3 ページ)
明治の人気チョコレート菓子である「アポロ」。1969年の発売から、今年で55周年を迎える。誕生秘話やその後の歩みを、ブランド担当者に聞いた。
大人になったら食べなくなる問題、どう解決する?
今年で55周年を迎え、同社を代表するロングセラー商品となったアポロ。しかし、ある課題に悩まされていた。「子どもの頃には食べていたけれど、大人になるにつれて段々食べなくなる、という状況が続いていました。ブランド成長のためには、一度離れてしまった大人を呼び戻す必要があったのです」(寺園さん)。離れてしまった大人需要を取り戻すため、同社が2020年2月4日に発売したのが「アポロマイスタイル」だ。
アポロマイスタイルは、アポロような箱ではなくパウチパッケージに入っている。見た目はアポロとほぼ同じだが、サイズがやや大きめなのが特徴だ。
アポロマイスタイル開発時に力を入れたのが、大人の日常生活を調査し、どういう商品にすればその日常生活に入り込めるかをイメージすることだった。「子ども向けのお菓子という印象から脱するため、通常のアポロに比べて砂糖を25%カットし甘さを控えめにしています。イチゴクリームはアポロより濃厚なものにし、大人向けな味わいに仕上げました」(寺園さん)
仕事中に食べることを想定し、手でつまみやすく、かつ一口で食べたときの満足感を出すため、少し大きめのサイズにした。また、つまんだときにチョコレートが手につきにくいよう、特別なコーティングを施している。パッケージは、持ち運びやすさを考慮し、中身が出づらいチャック付きのパウチパッケージを採用した。
アポロマイスタイルは、発売後から同社の想定を上回る人気ぶりを見せた。生産能力が追い付かず、一時品薄になることも。主な購買層は20〜30代の女性で、寺園さんは「想定顧客として設定していた層から支持を獲得でき、狙い通りの結果となりました」と振り返る。
健康系チョコレート全盛の中で
現在、同社のチョコレートカテゴリーの売り上げは、高カカオポリフェノールやプロテイン入りなどの「健康系」が大半を占めているという。アポロのような子ども向け商品は、たとえロングセラーでも売り上げは苦戦しているものもあるそうだ。その中でもアポロの売り上げは好調であり、寺園さんは2つの要因があると分析する。
1つ目は「ユニークな形状でかわいらしい見た目」「二層構造からなる独特の風味・食感」という、アポロの独自性だ。「こうした要素を持つアポロには、他のブランドには無い価値があると自負しています」(寺園さん)
2つ目は、ターゲットや用途に応じた商品展開があることだ。アポロは箱のイメージが強いが、それ以外にもさまざまなタイプを展開している。親子や友人でシェアができる大袋タイプのアポロ袋、若年層や大人の女性の自己消費に目を向けたアポロマイスタイル、クリスマス・バレンタインといった非日常需要のアポロビッグなどが該当する。
また、アポロが富士山のような見た目であることを生かし、インバウンド需要を狙った商品も展開している。富士山アポロビッグは、頂点部にホワイトチョコレートをかけ、縁起が良いとされる「赤富士」を再現した。「すでに『アップロール』という名前で、アジアを中心に展開しています。今後は、アジア以外での展開にも力を入れていきたいと考えています」(寺園さん)
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