万引は防げるか? セルフレジの発展系「Scan&Go」が伸び悩むワケ:がっかりしないDX 小売業の新時代(1/3 ページ)
セルフレジの発展系とも言える「Scan&Go」。専用のスマホアプリで決済できるものも増え、利便性が高まる一方で、普及はいま一つというのが実情だ。Scan&Goが伸び悩む理由とは――。
連載:がっかりしないDX 小売業の新時代
デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
前回の記事「結局、店員が常駐……日本の『もったいないセルフレジ』 米小売業との決定的な違いは?」までは、2回にわたりセルフレジについて書いてきました。
今回は、セルフレジの発展系とも言える「Scan&Go」について紹介します。
スマートフォンの登場以前から米国小売業の一部では、入り口で手持ち式のバーコードスキャナーを取り、店内を移動しながら購入商品のバーコードをスキャンして、その後レジに移動して決済を完了、スキャン装置を返却する――という仕組みを導入していました。
昨今は手持ち式のバーコードスキャナーを用いずとも、専用のスマホアプリで決済できるものも増え、利便性が高まっています。しかし、Scan&Goの普及はいま一つ、というのが実情です。
世界最大手の小売業、Walmart(ウォルマート)でさえ、導入しては廃止を2度繰り返しています。なぜ、Scan&Goは伸び悩んでいるのでしょうか。
著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
筆者が最初にScan&Goを体験したのは、年商500億ドル超のオランダ企業Koninklijke Ahold Delhaize N.V.(コーニンクレッカ・アホールド・デレーズ)傘下のSTOP&SHOPというスーパーマーケットです。1914年に創業し406店舗を展開する同スーパーで、「Scan it」と名付けられたScan&Goの仕組みを導入しています。現在はスマホアプリでも同じ仕組みを利用できます。
Stop & Shop2425 Palmer AvenueNew Rochelle, NY 10801店の「Scan it」と名付けられたモバイルセルフチェックアウトの仕組み(2022年9月16日、筆者撮影)
手持ち式バーコードスキャナーを各店舗に数十台設置するには多額の費用がかかります。スマホの普及により、バーコードスキャナーをいまだに設置している小売業はかなり少なくなった印象です。
スマホ端末を用いて、レジに長時間並ぶことなく決済できるモバイルセルフチェックアウトが俗に「Scan&Go」と呼ばれることが多いのは、やはりWalmartの影響ではないかと思います。
Walmartは2012年にレジ時間短縮による店内混雑軽減を目的としてモバイルセルフチェックアウトアプリを開発しました。このアプリの名前が「Scan&Go」で、現在は有料の「Walmart+」会員のみ使用することができます。
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