エプソン、三井化学が投資 「100億円」調達した東大発ベンチャーに聞く“タッグの作法”:スタートアップの突破口(3/3 ページ)
2014年に東大発スタートアップとして創業し、セイコーエプソンや三井化学など大企業からの資金調達を機にさまざまな協業を行い、事業シナジーを生んでいるのがエレファンテック。事業会社とスタートアップが抱えるそれぞれの課題などを語り合った。
サステナビリティの流れ 事業会社とスタートアップをつなぐ
及川: 時代の流れとしてサステナビリティに注目が集まっていますが、清水さんは創業時にはコスト面のメリットを強調していたと思います。今のような流れが来ることは読んでいたのでしょうか。
清水: いや、創業時は「水」が来ると思って、「水の使用量が減ります」と言っていました(笑)。水もいずれ来るとは思いますが、ニーズが大きくなってきたのはCO2排出のほう。今はわりとそちらにフォーカスしていますが、創業時から信じているのは「材料が減るのは絶対にいい」ということ。材料が減るという事実は、すなわちコストが減り、人手が減り、CO2が減るという話です。時代に合った、伝えやすい言葉で売っていこうと考えています。
及川: 23年にICT業界大手の台湾企業・LITEONと協業覚書を締結していましたね。
清水: LITEONは日本では聞きなれない会社かもしれませんが、グローバルではパソコンのキーボードにおいて極めて高いシェアを持っています。アップルは30年までにネットゼロができない企業はサプライチェーンから外すと明言していますが、LITEONも主要顧客は欧米メーカーですので、今後ネットゼロの達成が必須です。それがビジネス上の強みになっていくので、LITEONにとって当社と協業することがダイレクトに競争優位性につながることから、今回の発表につながりました。
及川: 世界のトレンドがよく分かりますね。日本でも事業会社とスタートアップの協業を進めるにあたり、オープンイノベーション促進税制を導入し、出資やM&Aもより推進しやすくなった点もあると思います。清水さんはこの税制についてどう捉えていますか。
清水: 日本のお金の偏在具合でいうと、VCと事業会社で比べると、VCの比率は伸びてはいるものの正直まだまだ小さいです。ですから、大企業の資金やリソース、ノウハウをいかに活用するかは非常に重要だと思います。その中で出資やM&Aに対して促進税制をやるというのは重要です。大企業は成功事例が出てくると、よりポジティブなサイクルを早く回すようになると思うので、促進することは非常に意味があると思っています。
ただ、大企業の意思決定に影響を与えるかというと、ダイレクトには効かないかもしれません。例えば、社会課題の解決に資するスタートアップへの投資やM&Aについては、統合報告書などでの開示を促すといったことのほうが、オープンイノベーションの促進にはいいかもしれないですね。
及川: 私もそう思います。「健康経営銘柄」を作ったように、「オープンイノベーション銘柄」を作るとか。空気づくりが大事ですね。
清水: そうですね。いわゆるGX(グリーントランスフォーメーション)の分野でも大きな投資が始まっており、非常に可能性を感じています。時価総額が13兆円に達する半導体メーカー・東京エレクトロンのように、「ここがなくなったら世界が終わる」というような技術を持つ会社こそ、日本が今後外貨を稼いでいくうえで非常に重要な存在になるでしょう。
脱炭素の文脈であれば、私たちが「この技術がないと達成できない」という日本発の実例を作っていくことができると考えています。10兆円企業がたくさんできてくれば日本経済にもプラスになりますよね。
及川: 当社もビジョンは「時代が求める課題を解決し時価総額10兆円企業へ」なんです(笑)。
清水: ですよね! そういう会社が増えていくといいですね。
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