リテールメディアを変える「エッジAIカメラ」 サツドラが導入後に得た成果とは?:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(3/3 ページ)
エッジAIの活用がさまざまな業界で広がっている。エッジAIを生かしたリテールDXに挑んでいる北海道のドラッグストア「サツドラ」では、どんな効果が生まれたのか――。
エッジAIを社会実装するために、今こそ分業が必要
このようにエッジAIの活用によって、クラウドAIよりも安価にオペレーションを効率化し、店舗の売り上げ拡大にとどまらず、広告の配信など新たな事業を創出できる可能性があります。
言うまでもなく、その可能性の源泉はデータです。そのデータを取得し有効活用するには、ハードウェアやソフト(ミドル)ウェア、そして、それらを管理・運用できるプラットフォームが必要になります。
従来のエッジAI分野では、こうした川上から川下までワンストップで取り組む企業がほとんどでした。しかし、テクノロジーの進化によって各企業の得意分野がはっきりしつつあり、業界の動きとして、“競争より共創”といった変化が起こりつつあるのも確かです。
こうした動きはテレビゲームの黎明(れいめい)期と似ています。当初は各企業がハードとソフトを一体で開発していましたが、ファミコンというハードの登場により、各企業はソフト開発に注力するようになり、そして世界的に広がっていきました。それと似た現象が起こりつつあります。
1月に米ラスベガスで開かれたテクノロジー見本市「CES 2024」でもエッジAI関連技術を集めたエリアが初めて登場。IntelやPCメーカー各社は「AI PC」という呼び方でエッジAI関連製品を発表し話題に(Idein提供)
AIカメラなどエッジデバイスの導入コストはいまだ大きく、特に大規模運用・管理面ではさまざまな課題が残されている中、こうした協業によって、幅広い業種・業界のDX化を加速させ、より安価で高付加価値なソリューション提供が可能となります。
こうした共創は、同事例だけでなく24年以降、世界中で活発に起きるものと予想されます。より導入のハードルが下がり、ナレッジが蓄積することで、リテール業界のみならず他業界でも飛躍的にエッジAIの活用が活発に行われていくことになるでしょう。
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