万引きの被害総額は年間8000億円超 従業員の犯行も? 一定の被害は諦めるしかないのか:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(1/4 ページ)
昔も今も万引き行為は後を絶たず、年間の被害総額は約8089億円に上る。それ以外にも数多の不正行為があり、最近では回転寿司チェーン店を中心に顧客の迷惑動画が拡散される事象も問題に。店舗側の負担となっていた防犯対策のコスト構造を変え、攻めの投資につなげる可能性を探る。
日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”
リテール業界はエッジAIを使ったIoTによって飛躍的に進化できる──そう話すのは、AI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京都千代田区)の中村晃一CEO。同社では、エッジAIのカメラやセンサー、マイクによってさまざまな店舗の収益改善に取り組んできた。本連載ではエッジAIを使ったIoTでどう収益性改善にアプローチできるのか、大型百貨店やコンビニ、対面接客といったケースごとの事例を基にその方法を紹介する。
本連載では「エッジAI×リテールビジネス」をテーマに、1回目はエッジAIのデータ分析を使ってリアル店舗を資産と捉える考え方について、2回目はそごう・西武をゲストに迎え、エッジAIでより顧客本意な店舗を実現する取り組みを紹介してきた。
読者の中には、ホットなリテールメディア領域の話を聞きたいと思う人もいるかもしれないが、まずはその前段階で見落としがち、もはや諦めがちな「不正行為」の防止策についてエッジAIの観点で伝えていく。
昔も今も万引き行為は後を絶たず、年間の被害総額は約8089億円に上る。それ以外にも盗撮や痴漢、器物破損など数多の不正・迷惑行為があり、最近では回転寿司チェーン店を中心に顧客の迷惑動画が拡散される事象が記憶に新しい。こうした行為は企業価値に影響を及ぼしている。
そこで今回は、独自の不正行動検知技術を活用した防犯サービスを提供するCIA(広島市)の長岡秀樹社長をゲストに迎え、中村氏と対談。店舗側の負担となっていた防犯対策のコスト構造が変わり、攻めの投資につながる可能性を語った。
かさむ防犯コスト 一定の被害は「経費の一部」と諦める背景
中村氏(以下、敬称略): CIAではリテール店舗の防犯対策事業を行っていますが、まずはどのような会社か簡単にご紹介いただけますか。
CIA 長岡秀樹社長 災害復旧事業・電気工事業を主とした有限会社ながおか(現:セレクト)を創立。防犯カメラの販売・設置を手掛ける中で効果的なカメラを開発。その後、不明ロスに直接アプローチするビジネスモデルを軸に、CIAを創設し現在に至る
長岡氏(以下、敬称略): 当社は、独自開発した監視カメラや不正行動の検知技術を活用し、店舗の防犯対策を担ってきました。これまで当社のカメラで捉えた不正行動は数万件を超えており、それらのデータを分析しています。
中村: 不正行為の対策は、店舗運営において避けては通れない問題です。これらを強化する店舗は増えているのでしょうか。
長岡: 間違いなく増えています。多くの店舗が監視カメラや出入口の防犯ゲート、万引きGメンの配備を強化しております。セルフレジ導入店舗が増えたことで、犯行エリアや手口なども複雑化しています。もはや「人件費削減のためには多少の被害は仕方ない」という認識が店舗運営で一般的になっていますね。
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