万引きの被害総額は年間8000億円超 従業員の犯行も? 一定の被害は諦めるしかないのか:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(2/4 ページ)
昔も今も万引き行為は後を絶たず、年間の被害総額は約8089億円に上る。それ以外にも数多の不正行為があり、最近では回転寿司チェーン店を中心に顧客の迷惑動画が拡散される事象も問題に。店舗側の負担となっていた防犯対策のコスト構造を変え、攻めの投資につなげる可能性を探る。
長岡: なぜなら原因不明のロス金額(不明ロス)は一次被害だけでなく、店舗や地域の治安悪化、一般生活者へ不公平感を与え、企業イメージを悪化させるなどさまざまな二次被害をもたらします。とはいえ、監視カメラを隙間なく設置していけばコストはかさみますし、その映像をチェックする人件費もかかります。実際は監視カメラの映像をチェックできず、事案発生後の警察対応などに使用するくらいとなっています。
中村: それだけのコストをかけながら、不正行為による被害は現在も深刻ですよね。
長岡: 実際の被害を見ると、来店者への防犯対策だけでは足りないことも分かります。というのも、内部不正者による不明ロスも多く、CIAの調査では内部不正者の8割は従業員であるということが分かっています。また、内部不正者の97%は勤務先店舗で犯行に及んだというデータも出ています。
中村: つまり外向きの防犯対策だけでは通用しないということですね。そんな中、CIAはどのような方法で店舗の防犯に貢献しているのでしょうか。
長岡: 不正行為の抑止、防止に力を入れています。具体的には、独自開発した監視カメラを店舗に設置することで、不正行為そのものを映像として確実に捉えられるようになっています。不正を行った人物が再度不正を行う目的で来店した際、顔認証で検知して自動で音声を流したり、店員にリアルタイムで通知したりなどの対応をしています。
この通知により、店員は対象者に声かけをします。声かけといっても「いらっしゃいませ」や「何かお探しですか」といった何気ないものです。これでも不正行為の抑止になります。
CIAは、サーベイランスセンターにて、店舗の映像分析を行っており、常に店長や防犯担当者と連携をとり、不正行為に関する映像分析サポートを行っています。仮に店舗で内部不正をしようとする従業員がいた場合も、大きな抑止効果が期待できます。
すでに成果も出ており、全国展開する大手小売事業者を対象とした実証実験では、従来の不明ロスの金額を平均で7割削減しました。また当社独自の防犯システムは内部の不正現場を捉える機能も備えており、内向き外向きの両方で有効に働いています。
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