カスハラ防止に“革命”も! エッジAIマイク×ChatGPTが描く未来の接客:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(1/3 ページ)
暴言、理不尽なクレーム、威嚇や脅迫まがいの言動など、顧客や取引先による接客時の迷惑行為「カスタマーハラスメント」。こうした課題は、エッジAIによって解決の糸口が見える可能性がある。と筆者は話す。
日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”
リテール業界はエッジAIを使ったIoTによって飛躍的に進化できる──そう話すのは、AI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京都千代田区)の中村晃一CEO。同社では、エッジAIのカメラやセンサー、マイクによってさまざまな店舗の収益改善に取り組んできた。本連載ではエッジAIを使ったIoTでどう収益性改善にアプローチできるのか、大型百貨店やコンビニ、対面接客といったケースごとの事例を基にその方法を紹介する。
暴言、理不尽なクレーム、威嚇や脅迫まがいの言動など、顧客や取引先による接客時の迷惑行為「カスタマーハラスメント」。従業員が休職・退職に追い込まれるなどし、現在でも多くの企業にとって経済損失も含め、深刻な問題となっている。2020年には厚生労働省により指針※1が策定され、事業主が取るべき対策が示された。
※1:「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
一方、業界によっては、接客現場における不正抑止も急務だ。数年前にはかんぽ生命保険と日本郵便による不正販売が問題になった。過度な成果主義という別の問題もあるが、現場がきちんと法令を順守して運用しているのか、ガバナンスを効かせなければならない。
多くの店舗、もしくは多くの営業パーソンを抱える企業にとっては、接客現場がブラックボックスになりやすい。しかし、そうした接客コミュニケーションが全て自動で“テキストログ”として残り、リスクのある接客にアラートが上がる仕組みになっていたとしたら――。その可能性について、中村氏に解説してもらった(以下、中村氏の寄稿)。
現場が苦慮するカスタマーハラスメントの実態
厚労省が20年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に職場でカスタマーハラスメントを受けた経験のある労働者は全体の15%でした。連合が22年に行った調査では、76.4%の人がカスハラを受けたことで「生活上に変化があった」と回答していて、「心身に不調をきたした」「仕事をやめた・変えた」としている人も見られます。
働く個人としても大きな問題ですが、企業側にとっても影響は甚大です。こうした理由で、採用・育成した従業員が産業医にかかる、もしくは休職や退職にまで追い込まれることで、年間で数千万〜億単位の経済損失を出しているといわれています。さらにそうした情報がSNSや口コミサイトなどで拡散されると、採用難易度が上がってしまうなどの副次的損失も考えられます。
では、どうすれば対策できるのでしょうか。全ての現場の接客記録を人力でチェックすることは困難ですし、そもそも現場のやりとりは、ほとんどデータとして記録されていません。報告が上がってきたとしても、それが「ハラスメントかどうか」「どんな対処をすれば良いか」「予防・解決のためのノウハウがない」など、現状での対応や取り組みは困難であるといえます(下図)。
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