カスハラ防止に“革命”も! エッジAIマイク×ChatGPTが描く未来の接客:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(2/3 ページ)
暴言、理不尽なクレーム、威嚇や脅迫まがいの言動など、顧客や取引先による接客時の迷惑行為「カスタマーハラスメント」。こうした課題は、エッジAIによって解決の糸口が見える可能性がある。と筆者は話す。
エッジAIマイクで接客現場を記録 カスハラが“自動検知”可能に
しかしこうした課題は、エッジAIによって解決の糸口が見える可能性があります。当社が提供している「AIマイクソリューション」を例に説明します。ICレコーダーにエッジAIを活用していて、人間が発話している期間だけを自動で録音データとして保存します。データは常時クラウドに送られ、端末に残らない仕組みなのでセキュリティの心配もありません。
また、この録音データは“話者分離”、つまり誰が話しているのかを別々に分離して認識できるようになっています。さらに、話者の発話以外の店内放送やBGMなどを“ノイズ抑制”し、記録に残らないようにしています。この技術によって、高精度・高品質なテキストログをエビデンスとして残すことが可能になりました。
このAIマイクはすでに、ある企業が全国展開している接客カウンタ―で約8000台が稼働中です。「マイクを設置している」と示すだけでもカスハラの抑止力になっている他、そのテキストログを生成AIであるChatGPTに解析させることで、よりスピード感をもってリアルタイムに近い形で問題のある接客現場を浮かび上がらせることができます。
例えば、ChatGPTに「お客さまの感情を“Angry(怒り)”“Stress(緊張)”“Joy(喜び)”“Aggression(攻撃的)”“Upset(動揺)”の5つで分類してください」とお願いすると、顧客が怒っている接客場面が抽出できます。その要因として、社員側の「応対マナー」の評価を行ってもらい、それが問題ない場合のみを精査することで、低コストでカスハラの可能性がある場面を抽出することが可能になるのです。
不正販売の抽出で、経費削減・リソース最適化も?
さらに「法律を守った販売行為が行われたか判定してください」など、現場で違法となるような不正販売が行われているかを抽出することもできます。ある業界を想定したテストで、さまざまなテキストログを元に検証した結果では、顧客が渋々納得して帰るようなスクリプトでも正確に検知ができました。
冒頭のかんぽ生命の件のみならず、業界によっては、店舗や営業スタッフによる強引な勧誘や、法律ギリギリラインの接客が問題になっています。1つの店舗の違反事例であってもSNSなどで瞬く間に拡散される時代ですから、企業にとっては事業停止やレピュテーション低下のリスクを常に抱えています。
現場を把握・管理するために覆面調査員を使って全店舗をチェックし、調査結果をふまえてアクションプランを策定するなど、莫大なコストとリソースを投下している企業もあるのです。AIマイクを活用してこれらの作業を自動化・リアルタイム化できれば、不正販売の抑止と、経費削減やリソース最適化の両立が見込めるかもしれません。
関連記事
- セブン-イレブンが挑戦する「リテールメディア」 実証実験で見えはじめた“究極の強み”
小売業界で注目が高まりつつある「リテールメディア」。セブン‐イレブン・ジャパンは自社アプリを通じた広告配信に加え、22年末から店舗にデジタルサイネージを設置した広告配信の実証実験を進めている。ねらいと現状の取り組みについて、セブン‐イレブンジャパンのリテールメディア推進部 総括マネジャーの杉浦克樹氏と、協業パートナーのLMIグループ(東京都港区)の望田竜太副社長に聞いた。 - 消えた学食を救え ファミマが無人コンビニで「初」の取り組み 新たな鉱脈探る
ファミリーマートは4月10日、大森学園高等学校内に無人決済システムを導入した店舗をオープンした。高等学校への導入は初となる。飽和化したコンビニ市場の次の鉱脈は? - 「鳥貴族に電話したらAIが出た」 スムーズなやりとりに驚きの声
鳥貴族は60店舗を対象に、電話対応にAIレセプションを導入した。電話の一次対応は対話型AIが行う。スムーズなやりとりに、SNSでも驚きの声が上がっている。 - ドローン配送は「日常風景」になる――地方自治体が直視すべき物流DXの必然性
過疎地域において、既存の物流システムが破綻する未来は迫っている。エアロネクストは、「新スマート物流」の社会実装に向け実証実験を進める企業の一つ。同社代表に、ドローン配送の「インフラ化」に至るまでの展望と課題、自治体に求められる役割について聞いた。 - 学生バイトが毎年600人「卒業」していく――東急ストアの人材難、打開を狙うDX戦略とは
東急ストアは4月から「matchbox」を導入。パート・アルバイトの他店舗への「応援」を効率化を目指す。年間で数千万円単位の採用コスト削減に期待。導入経緯を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.