カスハラ防止に“革命”も! エッジAIマイク×ChatGPTが描く未来の接客:日本のリアル産業を救う“エッジAI最前線”(3/3 ページ)
暴言、理不尽なクレーム、威嚇や脅迫まがいの言動など、顧客や取引先による接客時の迷惑行為「カスタマーハラスメント」。こうした課題は、エッジAIによって解決の糸口が見える可能性がある。と筆者は話す。
接客現場の可視化は、より大きなビジネスインパクトになる可能性も
さらには、生成AI(ChatGPT)との組み合わせによって、営業観点で収益をあげるための施策に活用できる可能性も広がっています。例えば、ChatGPTに『あなたはクライアント企業の接客の悩みを解決し、顧客満足度向上を必ず達成する一流のコンサルタントです』といった役割を与えることで、さまざまな指標を抽出して定量化することが可能になります。
その時期の販促商品を顧客に提案できているかなど、提案量を定量的に測ることも可能です。また「成約できた場合、成功要因を分析してください」「お客さまが接客のどのような点を評価したか分析してください」など、成約の要因を探ることもできます。こうしてスタッフのパフォーマンスを可視化できると、単なる売上以外の指標でも育成や評価が可能になり、現場のモチベーションアップにも貢献できるかもしれません。
今まで可視化できなかった接客現場の定量・定性効果をリアルタイムで分析することで、ビジネスの実態をより正しく詳細に把握できます。「ある商品の売り上げが上がらない」といった事象があるとします。その原因は「スタッフの売り方」なのか「商品が悪い」のか、それとも別の要素があるのか――。こういった、今まで可視化しづらかった接客現場の定量・定性的な評価をリアルタイムに行うことで、原因究明がより正しく、より容易に行える可能性があります。
分析で得られた示唆を素早く現場にフィードバックし、接客現場の改善や商品の改善にあてることもできるでしょう。また、今まで見えづらかった顧客ニーズが可視化できることで、新たな商品開発の可能性や蓄積したノウハウを他社に販売するなど、ユニットエコノミクスを大きく変えるビジネスモデルが生まれる可能性もあるかもしれません。
加えてChatGPTのOpenAI社では、多言語対応している音声認識モデル「Whisper」を公開しています。これを組み合わせることで、世界中の接客現場を分析できる可能性も生まれています。対面接客というのは全世界で行われている基本的なコミュニケーション。エッジAIを活用できる現場というのは、無限に広がっているといえるでしょう。
著者プロフィール
Idein(イデイン) CEO 中村 晃一
1984年生まれ、岩手県出身。東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻後期博士課程にて、スーパーコンピュータのための最適化コンパイラ技術を研究。AI/IoT技術を利用して物理世界をデータ化する事業にチャレンジしたいという思いから、大学を中退し2015年にIdeinを設立。18年には半導体大手の英ARM社から「ARM Innovator」に日本人(個人)として初めて選出された。プログラミング・ものづくりと数学や物理などの学問が好き。趣味でジャズピアノをひく。
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