「リスキリング後進国ニッポン」で成功するために、必要な2つの戦略(1/4 ページ)
国内でもさまざまなメディアがリスキリングを取り上げるようになりましたが、取組状況は諸外国に比べれば依然として遅れています。ビジネスパーソンが必ずしも勤務先に頼らず、効果的なリスキリングを行うには、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。
世界の10億人が、リスキリングを実施する──そんな「リスキリング革命」構想が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発表されたのは、2020年のことでした。
30年までに、第4次産業革命に対応した教育とスキルと仕事を提供するというのが、その内容です。現在、世界人口は80億人ですから、8人に1人がリスキリングの機会を得ることになります。
それから約4年。国内でもさまざまなメディアがリスキリングを取り上げるようになりましたが、諸外国の状況に比べれば、まだ後塵を拝する状況だと言わざるを得ません。そんな中でもビジネスパーソンが、必ずしも勤務先に頼らず効果的なリスキリングを行うには、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。
なぜ今、リスキリングなのか
リスキリングとは、働く人が今とは異なる仕事、あるいは新しい仕事をするために、知識とスキルを獲得することです 。
リスキリングと似た言葉にリカレント教育があります。リカレントは循環という意味で、リカレント教育はそのまま「循環教育」とも訳されます。勉強は子供のときだけにして、以後は仕事だけをするではなく、学校→職業→学校→職業→……というように、必ずしも新しいことだけではなく、一度勉強したことも含めて勉強し直すことです。従って、リカレント教育では学校が重要な役割を果たします。
学習の場が基本的に学校であるリカレント教育に対して、リスキリングは必ずしも学校では行われません。そして教育内容が基本的に既知のことの復習であるリカレント教育に対して、新しく、未知のものであるのがリスキリングです。
リスキリングという考え方が生まれた背景には、第4次産業革命があります。第4次産業革命とは、IoT、ビッグデータ、AIを中心とする技術革新のことです。第1次産業革命は工場の機械化、20世紀初頭の第2次産業革命は分業の導入と電力の利用、1970年代の第3次産業革命はオートメーション化です。
IoTにせよビッグデータにせよAIにせよ、高度に知識集約的な技術であり、十分に保有しているかどうかを、本人による自己申告だけで判断することはできません。口頭試問でも判断できません。第三者によるお墨付きが必要です。単に知識を伝達するだけでなく、知識の程度を証明する仕組みも必要であり、それがリスキリングです。
アメリカではすでに社会人教育の中に修了証書を発行するコースが登場しており、世界中の人々がオンラインで受講しています。修了証書は就職する上で有利に働くとされています。
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