「リスキリング後進国ニッポン」で成功するために、必要な2つの戦略(2/4 ページ)
国内でもさまざまなメディアがリスキリングを取り上げるようになりましたが、取組状況は諸外国に比べれば依然として遅れています。ビジネスパーソンが必ずしも勤務先に頼らず、効果的なリスキリングを行うには、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。
“リスキリング先進国”が持つ制度や仕組み
新しい技術が登場し、そこへの労働力移動の必要性が生じ、スキルの再構築が必要になるのは、歴史の中で繰り返されてきたことです。人類は、リスキリングと共に繁栄の道を歩んできました。
文字を書くこともその一つです。書くことを覚えれば重労働をせずに済むというのは、紀元前3000〜2000年のエジプトの一部の人々にとって魅力的なことだったと推察される記録が残っています。
現代の世界を見渡すと、例えば仏国には「職業移行計画」という制度があります。これは、雇用主は労働者から請求があれば「職業移行休暇」を取得させなければならないというものです。
休暇中は「地域職際労使調停委員会」から、休業前12カ月間の賃金の60〜90%の賃金が支給されます。訓練の内容は職種の変更を可能とするものに限られます。雇用主は訓練が終了した労働者を、その労働者が持つ資格に応じたポストで復職させなければなりません。労働者も訓練が終わったときには復職する義務があります。
スウェーデンには「職業大学」という制度があります。学べる分野は「経理・事務・マーケティング」「保険医療・ソーシャルワーカー」「コンピューター・IT」など多くの職業を網羅しています。日本の、教育内容をほとんど管理されない大学とは異なり、国の職業大学庁がカリキュラムや質を管理しています。
社会的に必要性が薄れたコースは定員を減らして、卒業後に仕事がないという事態を防いでいます。学期はコースにより1〜3年、学費は無料で、国から子どもの数に応じた生活補金や低利ローンが受けられます。
ただし職業大学へは希望者全員が入学できるわけではなく、入学試験の倍率は平均3倍程度です。職業大学への入学希望者を対象にした「成人高校」というものもあります。職業大学とは別に「一般大学」もありますが、こちらも職業能力の養成を重視しています。
こうした事情を反映して、大学は若者だけが学ぶ場ではなく、大学生の15%が40歳以上、18%が30代です。25歳未満は45%しかいません。生涯学習を重視しているのはスウェーデンに限ったことではなく、北欧諸国に共通して見られる特徴です。
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