音響メーカーのオーディオテクニカは、なぜ「寿司ロボット」を開発したのか しかも40年前から:祖業は「レコード針」(2/4 ページ)
回転寿司の寿司ロボットといえば、シャリ玉を高速で製造したり、海苔巻きを巻いたり。どのような会社がつくっているのかというと、意外にも……。
CDの脅威が寿司ロボットを生んだ
音響機器で評価を博してきたオーディオテクニカは、なぜ寿司ロボットの開発に至ったのか。同社の斎藤隆志氏(特機部 KE営業課 国内グループ リーダー)は次のように話す。
「当社の祖業はレコードプレーヤーのカートリッジで、長らくオーディオ関連の商品が主力だったのですが、CDプレーヤーの登場が転換点になりました。強みであったアナログオーディオ市場が縮小する中で、危機感を抱いたのです」
オランダのフィリップス社が世界初とされる音楽CDを発売したのは82年だ。時を同じくして国内でこれまた世界初とされるCDプレーヤーを、ソニー、日立製作所、日本コロムビアの3社が発売した。その後、音楽を楽しむ方法がアナログからデジタルへと変わっていったのは周知の事実である。
こうした変化を敏感に察知して、オーディオテクニカは新たなビジネスを生み出すべく社内でアイデアを募った。そこから、同社が現在展開している寿司ロボットの源流である「にぎりっこ」が生まれた。しかし、なぜ寿司だったのか。
この点に関して、当時の担当者が社内に残っておらず、詳しくは分からないとした上で、斎藤氏は「とにかくいろいろなことにチャレンジしてみるという機運の中で、当時の社長が寿司好きだったことも影響したのではないでしょうか」と話す。
その後、にぎりっこは専門の部署も立ち上がり、84年に家庭向けをメインにした、楽しみながら調理するクッキングトイとして発売に至った。当時意識したポイントは、いかに再現性を持ってシャリ玉の形を作れるかである。ご飯を機械に載せ、ハンドルを回すと下からシャリ玉が出てくる簡単な仕組みだったという。
シンプルな構造ながら「寿司パーティーを自宅でやろう」といったメッセージと、当時はクッキングトイという商品ジャンルが物珍しかったことから反響は「結構あった」と斎藤氏。旺盛な需要を追い風に、売り上げを伸ばしていった。
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