なぜ「でっかいCDラジカセ」が売れているのか たまに止まる理由:週末に「へえ」な話(3/5 ページ)
ドウシシャの「でっかいCDラジカセ」を販売したところ、じわじわ売れている。1970〜80年代に流行ったラジカセをなぜ開発したのか。担当者を取材したところ、昔の思い出がたくさん詰まっていて……。
商品開発を語る上で欠かせないエピソード
第3弾を開発するかどうか、議論を重ねていった。企画会議といえば、マーケティング調査をして、膨大なデータを取得して、それを分析して、エラい人が決裁印を押して……といったイメージがあるが、同社はちょっと違う。ニッチ市場を狙っていることもあって、競合商品がないことも多い。CDラジカセの開発をめぐっても、同じようなコンセプトをもつ商品がなかったので「とりあえず販売してみて、消費者の反応を見よう」という話になったそうだ。
こうしてエラい人の決裁印が押されたわけだが、商品開発を語る上で欠かせないエピソードがある。それは金谷さんの青春時代の1ページだ。70〜80年代、多くの若者がオーディオに夢中になっている中で、学生だった金谷さんもラジカセがほしかった。しかし「高額で買えませんでした。当時のことを思い出すと、いまでも“悔しい”という気持ちになりまして。学生のころに憧れていたラジカセを思い出しながら、商品を企画していきました」という。
こうした過去があったので、「価格」面で譲れないことがあった。あれもこれもたくさんの機能を搭載すると、どうしても高くなってしまう。高額の商品になってはいけないと思って、「上限5万円」を設定した。若いころラジカセに憧れた世代にとって、その金額はそれほど高くないかもしれない。
しかし、である。今の時代に、CDラジカセは必要なのか。家族と一緒に暮らしていて「CDラジカセを買ってきたよ。これでテープを聴こうよ」と言ったら、どのような反応が返ってくるのか。価格を問い詰められるので、そこで「10万円ちょいかな(汗)」といった話をすれば、非難される可能性が高い。
「また、ムダなモノを買ってきて。返品してきなさいっ!」と言われないようにするには、値付けがキモになる。「5万円以下であれば、『自分の小遣いで買った』と言っても、怒られないのではないか。というわけで、CDラジカセの価格は4万3780円にしました」
関連記事
- 東芝のラジカセが売れている背景に何が? 企画担当者に聞く
東芝エルートレーディングのCDラジカセ「Aurex TY-AK1」が売れている。50代から多くの支持を集めているわけだが、どのような機能が搭載されているのか。同社の開発担当者に話を聞いた。 - それでもTEACが、カセットデッキをつくり続ける理由
オーディオメーカーのTEACがダブルカセットデッキを発売した。カセットテープ市場は20年以上前から縮小しているのに、なぜこのタイミングで新製品を投入したのか。同社の担当者に理由を聞いたところ……。 - えっ、CDプレーヤーが売れている? エスキュービズムの戦略が面白い
ポータブルタイプのCDプレーヤー市場が面白いことになっている。市場が縮小していくなかで、新興メーカーのエスキュービズムが発売したところ、ある層を中心に売れているのだ。「CDプレーヤーなんてオワコンでしょ」と言われているなかで、どういった人たちが購入しているのか。 - 殻を捨てた「ザク」が、20万個以上売れている秘密
バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.