なぜ「でっかいCDラジカセ」が売れているのか たまに止まる理由:週末に「へえ」な話(2/5 ページ)
ドウシシャの「でっかいCDラジカセ」を販売したところ、じわじわ売れている。1970〜80年代に流行ったラジカセをなぜ開発したのか。担当者を取材したところ、昔の思い出がたくさん詰まっていて……。
なぜその機能を搭載したの?
このほかにも、さまざまなモノを搭載しているわけだが、個人的に気になったのは「なぜそれを?」と思わず口にしてしまう機能である。アンプの出力レベルにあわせて動くVUメーターがあったり、マイクボリュームを搭載したカラオケ機能があったり。マイク入力は2系統なので、デュエットが好きな人にとってはたまらない機能かもしれない。
カラオケボックスがいまのように広がっていなかった80年代といえば、家でカラオケを楽しむ人が多かった。専用の機械を買う人もいたが、価格はそこそこする。部屋が狭くなるし、高くて買えないよ。といった人は、ラジカセにマイクをつないで歌っていたのだ。このほかにも、乾電池で動くようにしたり、持ち運びができるように取っ手を付けたり。細部にわたって当時のラジカセを再現しているのだ。
そもそも、なぜノスタルジックな雰囲気が漂うCDラジカセを開発したのか。ドウシシャにとって、このシリーズは第3弾となる。第1弾は23年1月に「ステレオラジオカセット SCR-B7」(2万1780円)を発売。「機能は今どき、デザインは80年代へタイムスリップ」をうたって、クラウドファンディングで販売したところ、1163人が購入したのだ。
サイズを見ると、幅が42.5センチなので、そこそこ大きい。消費者から「小さいサイズのモノがほしい」といった声があったので、第2弾で小型の「ステレオラジオカセット SCR-B3」(1万2980円)を発売。こちらもクラウドファンディングで扱ったところ、691人が購入した。いずれも目標を大きく上回る結果だったので、「第3弾をどうするか?」といった話が始まったそうだ。
企画会議の席で、議論になったことが2つあった。1つは市場のこと。競合のCDラジカセを見ると、ターゲットは高齢者向けのモノが多い。開発担当者の金谷衛さんは「第1弾、第2弾のように、昔の若者が憧れたデザインのモノはできないか」と考えた。アーティストに目を向けると、レコードやテープを発売する動きがある。いわゆる“推し”がテープを出していれば、今の若者も「ラジカセで聴いてみたい」と思うのではないか。
もう1つは、レトロブームが続いていること。昭和を感じさせるグッズがたくさん販売されていて、若い人にとってはそれらの商品を新鮮に受け止めている。であれば、80年代に流行ったデザインのCDラジカセも支持されるのではないか。
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