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「イトーヨーカドー」はなぜ大量閉店に追い込まれたのか “撤退できぬ病”の可能性:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
なぜイトーヨーカドーは大量閉店に陥る事態になってしまったのか。同店がかかえる本質的な問題は……。
イトーヨーカドーの現状を引き起こした「病」とは
それは何かというと、「撤退できぬ病」である。
聞き覚えのない響きに困惑する人も多いだろうが当然だ。これは筆者が報道対策アドバイザーとしてさまざまな「問題企業」にかかわるうちに気付いた、多くの企業に共通している組織病理を勝手に命名したものである。
では、「撤退できぬ病」とは具体的にどういうものかというと、明らかに破綻が目に見えている事業や、どう考えても到達不可能な目標などから経営者が目を背け続けて、「やめます」の一言が言えず問題を先送りにしてしまうことである。
「ここまで何十年も続けてきたことをそう軽々とやめられない」
「会社の根幹にかかわることなので、社内で議論を尽くして慎重に判断すべきだ」
「雇用を守り、お客さまや取引先へのご迷惑がかからないように熟慮すべきだ」
こんなもっともらしいことを言っているうちに時間だけが経過して、気が付けば目も当てれないほどの大損害。「こんなひどいことになるんだったら、もっと早くスパッと撤退しておけばよかった」と自分たちの優柔不断さを悔いる企業が少なくないのだ。
イトーヨーカドーはそんな「決められない会社」の典型的なパターンに陥っている可能性が高い。それがうかがえるのが、23年に同店が衣料品事業から撤退した際のプロセスを報じた『読売新聞』だ。
『改革案に「撤退」の文字を盛り込むかどうかは最後まで迷いもあった。内部からは、「プライドや雇用もあって、衣料品はやめられない」との声も聞かれた」(読売新聞 23年3月10日)
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