「値下げで過去最高益」のイオンが、賃金を上げなければ非常にマズいワケ:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
「値下げ」は消費者にとって喜ばしい話のようだが、実は日本全体の視点で考えると、あまり喜ばしい話ともいえない。その理由は……。
「値上げラッシュ」でスーパー各社が苦しんでいた中で、こちらはこの世の春を謳歌していたということか――。
イオンが2024年2月期連結業績予想について、営業利益を従来予想2200億円から、過去最高となる2400億円に上方修正したと発表したのだ。
ご存じのように、昨今は「値上げラッシュ」によって、スーパーの多くは大苦戦が続いている。帝国データバンクが23年10月に発表した「食品スーパー業界」の動向調査結果によれば、22年度の食品スーパー事業が前年度比で「赤字」「減益」となった企業は68.8%だったという。
そんな大逆風の中でイオンが打ち立てた「過去最高益」。同社によれば、プライベートブランド「トップバリュ」の値下げや、増量キャンペーンが奏功し、客足や販売数量が伸びたからだという。
……という話を聞くと、「やっぱり苦しい時こそ値下げする企業が支持されるのだ」とイオンを称賛される方も多いだろう。
マクドナルドの値上げニュースに対して、インターネット上の口コミやSNSで「もう行きません」とわざわざ全世界に宣言をする人が多いことからも分かるように、世界を見渡しても、日本人は「値上げヘイト」が強い国民性だ。
東京大学・渡辺努教授の『物価とは何か』(講談社選書メチエ)によれば、米国、英国、カナダ、ドイツ、日本の消費者に対して「いつもの店である商品が10%上がっていた場合にどうするか」と尋ねたところ、日本人だけが「その店で買うのをやめて他店でその商品を買う」「その店でその商品を買う量を減らす」の項目を強く支持した。この結果を受けて、同書は「値上げを断固拒絶するのは日本の消費者だけ」と結論付けている。
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