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「値下げで過去最高益」のイオンが、賃金を上げなければ非常にマズいワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
「値下げ」は消費者にとって喜ばしい話のようだが、実は日本全体の視点で考えると、あまり喜ばしい話ともいえない。その理由は……。
「値下げ」が日本人をさらに貧しくするワケ
そういう意味では、「値上げラッシュの中で値下げを断行」のイオンが過去最高益というのは、日本人の大衆心理を読み切った見事な「戦略勝ち」だったといえよう。
イオン的にはハッピーなことこの上ないめでたい話ではあるのだが、日本全体という大局的な視点で考えると、実はあまり喜ばしい話ではない。イオンが「値下げ」でウハウハになればなるほど、日本人はどんどん貧しくなっていくからだ。
「庶民の生活を第一に考えてくれるイオン様を悪く言う低脳ライターめ、義務教育からやり直して経済をイチから勉強し直せ!」というお叱りが全方向から飛んできそうだが、「トップバリュ、いつもお世話になっています!」という個々の事情をいったん脇に置いて、イオン周辺のスーパー、量販店など競合の小売業者の心理を想像していただきたい。
イオンが値下げで過去最高益となれば、イオンと熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げている地場のスーパーも値下げに踏み切るしか生き残る道はない、というのは説明の必要がないだろう。
しかし、そのような規模の中堅地方企業では、「流通の巨人」のように大量仕入れや輸送でコスト圧縮といったスケールメリットを生かした戦い方などできるわけがない。とはいえ、あきらめたらそこで試合終了だ。
結局、限りある経営資源と「人間のがんばり」でイオンに立ち向かうしかない。そういう圧倒的不利の戦いをしていく中で最も手を付けられやすいのが「賃金」だという説明は必要あるまい。
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