「イトーヨーカドー」はなぜ大量閉店に追い込まれたのか “撤退できぬ病”の可能性:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
なぜイトーヨーカドーは大量閉店に陥る事態になってしまったのか。同店がかかえる本質的な問題は……。
イトーヨーカドーが「撤退」できなかったワケ
「撤退」を決断せずに改革を先延ばしにすればするほど事態は悪化していくので、人員整理も大規模になっていく。『WBS(ワールドビジネスサテライト)』(テレビ東京系、23年9月)の報道によると、2500人規模のリストラ計画が検討されているという。しかし、『日本経済新聞』が2月29日に報じたところでは、正社員の1割に当たる700人が早期退職に応募したそうだ。つまり、人員整理は今後も続いていく可能性が高い。
本当に「雇用を守る」ことを第一に考えているのならば、こんな事態になる前に「もうけられない衣料品事業」からの撤退を決断し、段階的に他部署や成長分野へと人員を移していくことがベストだったことは言うまでもない。
それを23年まで先送りにしたということは、イトーヨーカドーにとって「雇用を守る」ことよりもはるかに大事な「何か」を守っていたからだ。では、何がイトーヨーカドーの経営陣に撤退を思いとどまらせていたのかというと、その答えは先ほど紹介した『読売新聞』の記事に出ていた。
「プライド」である。
実はイトーヨーカドーはもともと衣料品店だ。イトーヨーカドー、セブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパンの設立者である伊藤雅俊氏の叔父にあたる吉川敏雄氏が1920年、東京・浅草で始めた「羊華堂洋品店」が前身である。戦後、この衣料品店を伊藤氏が引き継いで58年に「ヨーカ堂」を設立した。
つまり、衣料品事業というのはセブン&アイグループにとって「祖業」であり、創業者・伊藤氏の魂を現代に引き継ぐという意味でも、非常に重要な位置付けなのだ。伊藤氏を崇拝している経営陣としては、「もうからない」という理由くらいで「創業者の魂」を捨てる決断などできるわけがない。
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