自動車記事を書く時の3つのポイント:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)
今回のお題は「自動車記事の書き方」。批判をする時は真剣な愛か怒りを持ってすべし。面白がってやらない。自分を立てるために書かない。そういう大方針の上に、一応の手順というのがある。基本形としては、自分がクルマの試乗に行く時の時系列を順に文字化していけばいい。
やりたいことは要するに「一人でやる自転車遊び」というところから見て、筆者なら想定するユーザーは、たぶん「子供が一緒に出かけてくれなくなったお父さん」を考える。まだまだ学費もかかるしそれほど豊かではないだろう。となれば、第一候補はスズキのソリオ、対抗でトヨタ・ルーミー。もう少しファミリーニーズが高ければホンダ・フリードやトヨタ・シエンタも入るかもしれない。
あるいはもう少し懐事情が厳しいか、あるいはもう少しゆとりがあって2台目として軽自動車も候補に入れるならば、スーパーハイト系の各モデルも入ってくる。なんなら軽の最近のトレンドとしては、積載能力を上げ商用登録で維持費を抑えるモデル、例えばスズキのスペーシア・ベースあたりも選べるからだ。商用という意味ではさらに割り切れば、あえて軽トラにすればそれはそれでまたいろいろ使い道が広がる。
こういうのを顧客のニーズと利便性でそれぞれグループ分けして取捨選択し「対決の構図」を考える。想定する価格クラスや、一番大事な荷室の寸法、シートのアレンジはどうなのか。要はどのクルマとどのクルマを比べるのかを決める。そしてその対決の構図を俯瞰(ふかん)して書くことがおそらくはスタートになる。
構図の作り方はいろいろある。ソリオとルーミー、フリードとシエンタのように順当に真っ向対決のライバルをぶつけてもいいし、もう少し捻(ひね)ってそれぞれのクラスターから代表的なモデルを抜き出して、スペーシア・ベース対ソリオ対フリード対ハイエースの異種格闘技戦みたいな構造にもできる。そうやって構図を組むことが始まりだ。
ドラマでも映画でもアニメでも、最初に主要人物の紹介と関係性を説明する。そういう機能を担うのが対決の構図である。対決の構図はよっぽどのことがない限り複数台が前提になるはずだが、構図はあくまでも構図。その構図を前提にクルマを検分する場合、何も全てのクルマを並べて書く必要はない。構図を背景に1台にフォーカスを絞って書くことも十分にある。
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