自動車記事を書く時の3つのポイント:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
今回のお題は「自動車記事の書き方」。批判をする時は真剣な愛か怒りを持ってすべし。面白がってやらない。自分を立てるために書かない。そういう大方針の上に、一応の手順というのがある。基本形としては、自分がクルマの試乗に行く時の時系列を順に文字化していけばいい。
対決の構図を作れ
試乗に行くということは、そのクルマになんらかの興味があるわけで、それは必ずしも自分じゃない誰かでもいい。というよりは自分という尺度しかないと興味のないジャンルのクルマは書けなくなる。「これに乗る人はどうしてこのクルマに興味を持つのだろうか」というところがスタートだ。
世間一般の普通の人は、クルマに興味を持って試乗に至る前に、ググっていろいろ調べるだろう。そのクルマを乗りに行くに至る理由や条件を、最初にちゃんと考察することだ。例えばCセグメント級のSUVがほしいとかBセグのコンパクトがほしいみたいなことだ。CセグSUVなら昨今それなりのお値段なので、値段に見合う高級感と装備。Cセグは今やベーシッククラスではないのでデザインも重要だ。これがBセグなら基準が違う。まずは道具としての正しさ、それに価格と経済性。その上での性能となるだろう。
要するにそのクルマを見る角度を決めて、必要性能、差別化ポイントを比較できるように、「対決の構図」を作って、乗る前に分かる商品背景をちゃんと書く。ここが一番見識が求められる部分である。そして実は書く側がプロだったら編集者がここに関与して書き手と二人三脚でマッチメイクをする。それが編集企画になるわけだ。筆者の場合本人が元々編集者なので、それがワンストップでできるからひとりで回せるのだ。
もう少し複雑なケースを見てみよう。例えば、趣味として、月に1回くらいクルマに自転車を積んで景色の良いところへ出掛けて、そこでサイクリングを楽しみたいというニーズがあったら、どういうクルマを選ぶか。
日常使用から高速巡行性能から荷室容量まで一切合切の全部を求めるならトヨタ・アルファードのようなクルマになるだろうし、積載の部分に重きを置けばトヨタ・ハイエースになる。でもたぶん、自転車を積んで遠出したいという最初の動機に対しては、スタート価格が540万円のアルファードは高過ぎるし、WLTC8.1キロのハイエースは燃費がしんどい。しかもどちらも普段使いにはデカい。
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