豊洲市場に人が集まっているのに、なぜ築地場外市場は今もあるのか:魚ビジネス(5/5 ページ)
豊洲市場には、日々人が集っています。一方、築地場外市場にもたくさんの人が集まっています。豊洲市場移転の際、「築地がなくなる」という声を聞いたことがあるような……。
実は、築地場外市場というのは、築地の隣に位置する銀座の飲食店にとっては、豊洲市場よりも利便性の高い立地にあります。また、鉄道・バスといった公共交通機関を使って買出しに来る小規模事業者にとってもアクセスが良く、小規模事業者に利便性の高い市場になっています。
一方で豊洲市場は、大規模な施設を構えているため、大規模な流通に向いています。
結局のところ、築地市場から豊洲市場への市場移転とは何だったのかというと、大規模な流通と小規模な流通で求められる性質が違うため、その棲(す)み分けがされたということなのです。
これからも「築地がなくなる」ことは、当分の間ありません。築地場外市場が果たす役割は、東京や日本の食文化を守っていくにあたり、重要な位置にあるのです。
この記事は、『魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養』(ながさき一生/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
ながさき一生(ナガサキイッキ)
おさかなコーディネータ。株式会社さかなプロダクション代表取締役。一般社団法人さかなの会理事長・代表。東京海洋大学非常勤講師。
1984年、新潟県糸魚川市にある「筒石」という漁村の漁師の家庭で生まれ、家業を手伝いながら育つ。2007年に東京海洋大学を卒業後、築地市場の卸売企業に就職し、水産物流通の現場に携わる。その後、東京海洋大学大学院で魚のブランドや知的財産の研究を行い、修士課程を修了。
2006年からは、ゆるい魚好きの集まり「さかなの会」を主宰し、「さかなを捌きまくる会」などの魚に関するイベントをこなす中で、メディアにも多数取り上げられる。2017年に「さかなプロダクション」を創業し独立。
食としての魚をわかりやすく解説する中で、ふるさと納税のコンテンツ監修や、ドラマ「ファーストペンギン!」の漁業監修を手がける。水産業を取り巻く状況を良くし、魚のコンテンツを通じて世の中を良くするため、広く、深く、ゆるく、そして仲良く、仲間たちと活動している。
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