欧米で警戒されるロシア製ソフト、日本政府が使用していた どんなリスクがあるのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)
日本の中央省庁などの公的機関が、欧米で警戒されているロシア製ソフトウェアを使用していることが分かった。日本各地の国土情報や、港湾などの施設情報が国外に漏れる可能性もある。リスクを放置せずにしっかりと対応するべきだ。
各地の測量データが漏れる可能性
筆者が入手した政府文書によれば、このソフトウェアは、ロシアのA社という企業が製造・販売している。同社はデジタル画像処理や3次元空間データを生成するソフトを開発しており、ロシアのウクライナ侵攻以降、英国やエストニアといった国では販売代理店が取り扱いを中止している。
だが日本では、公的機関などが使用しており、ウクライナ侵攻以降も使い続けている。前出の経済安保当局者は「国土交通省の事業などで現在も現役だ。しかも地方自治体や企業でもこのソフトが幅広く使われているので、欧米からも目を付けられている」と言う。
このソフトはもともと、セスナなどの航空測量のツールとして使われていたものだ。今では、日本の地形情報や地図用のデータ出力などを実施でき、集められた情報は同社のクラウドなどに保存されて処理を行うことができる。つまり、日本各地の国土の状況をスキャンすることになるのだが、そうした情報がロシア側に筒抜けになる可能性がある。
これはロシアに限らないことだが、日本人の生活に直結する重要インフラの詳細情報が国外に漏れる可能性があるということだ。これは国や国民の安全を守るための国防の問題、つまり経済安保にもつながっていく。
A社のソフトウェアは、国産のソフトウェアと比較して維持費がかからず、安価で利用できると喧伝(けんでん)されている。中央省庁や自治体には、かなりアピールとなるポイントだ。
国土交通省は、近畿地方整備局大規模土砂災害対策センターなどがまとめている報告書でも、無人機を使って撮影したデータからA社のソフトで空中写真を生成している。日本の国土の地形や、森林の害虫被害の状況なども把握できてしまう。ダムや公的施設のみならず、港湾施設なども位置関係が丸裸になる。
また、民間の企業が同ソフトを導入して別のサービスを提供しているケースもあり、原子力発電所の周囲や放射能汚染のデータも吸い上げられているという。しかも問題は、ロシアがこうしたデータを入手することにより、自衛隊の基地や政府機関、周辺環境などの情報も収集されてしまう可能性があることだ。
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