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銅よりも高い……「カカオショック」勃発で“チョコレートは贅沢品”になるのか古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

カカオ価格の急激な高騰が、チョコレート産業に大きな打撃をもたらしている。今後も長期にわたって続くのか。

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 カカオ価格の急激な高騰が、チョコレート産業に大きな打撃をもたらしている。

 明治は3月22日、「マーブルチョコレート」「チョコベビー」「きのこの山」「たけのこの里」といったメジャーなチョコレート製品を含む67品目を3月26日から値上げすると発表した。

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 特に値上がり幅が大きいのが「きのこの山」や「たけのこの里」だ。価格を据え置きにして内容量を減らす、いわゆる“実質値上げ”の方法を採った。グラム当たりの価格で考えれば、最大33%の値上がりに等しい。生活に表れはじめているカカオ価格の高騰は、今後も長期にわたって続くのか。

カカオが“急騰”──長期化するのか?

 このようなチョコレート製品の急激な値上がりは、カカオ価格の高騰と関連している。これまでのカカオ不足や原材料費高騰の主な理由は、生産国の政情不安定やフェアトレードの推進などだった。しかし今年については、全く異なる値上がり要因が発生している。

 具体的には、カカオの主要生産国である西アフリカの国々(特にコートジボワールとガーナ)でカカオ豆の木の病気がまん延している。さらに、冬季には追い打ちをかけるようにエルニーニョ現象が深刻化し、カカオ豆の木が枯死する問題も発生している。カカオ豆の収穫は夏季であるが、これらの問題によって、今夏の生産量も大きく減少することが見込まれている。

 カカオ豆相場の推移を見ると、2024年3月には1キログラム当たりの先物価格が10ドルを超え、史上最高値を更新した。前年比で2倍以上となる異常な高騰ぶりである。銅先物が1キログラム当たり9ドル近辺で推移していることを考えると、カカオは“貴金属よりも価値がある”ことになる。

 にもかかわらず、グローバルなカカオの需要は依然として高い。新興国市場でのチョコレート消費の増加も価格を押し上げる一因となっている。このような需要の高まりと、生産面での問題が複合して、カカオ価格が高騰しているのだ。

 この価格上昇は、チョコレートの製造コスト増加を引き起こし、最終的には消費者価格に反映される可能性がある。この現象は、チョコレート産業全体にとって重大な意味を持ち、業界関係者から消費者まで、多くの人々がその影響を受けることになるだろう。

 国際カカオ機関(ICCO)によると、1年前から「カカオショック」の兆候は現れていた。22年10月から23年9月の栽培シーズンでは、世界市場が11万6000トンのカカオ不足に直面していると報告されている。この予想には今回の病気や異常気象は織り込まれていなかったことから、今後もカカオ不足の影響は長期化すると考えられる。

 カカオ価格が決定されるプロセスは、国際的な供給と需要のバランスに大きく左右される。一部の製造業者は、高価なカカオ豆の代わりに代替素材を使用する動きもあるが、価格の高騰が急激であるがゆえに消費者の間でもさほど浸透しておらず、抜本的な解決策とはなっていない。

 カカオ価格の高騰は、チョコレートの小売価格にも影響を及ぼしている。消費者は、より高価格のチョコレートに対して消極的になる可能性があり、これにより特定の価格帯の製品に対する需要が変動する可能性がある。また、消費者は品質に対する価値を見直し、価格の安い別のお菓子へと移行する傾向があるため、メーカーとしてもグミやキャンディーなど、チョコレートを使わない製品に需要が集中することを見込んで生産量を増加させる対応を取ることが考えられる。

 カカオの異常な価格高騰は、新型コロナウイルスの流行などにより木材価格が高騰した「ウッドショック」と重なってみえるが、その影響は長期にわたるのか。

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