なぜ、すぐに「辞めます!」という新入社員が増えているのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
「入社前に聞いていた話と全然違う 」――そんな理由で、入社早々に会社を辞める新入社員が話題を集めている。なぜ、すぐに辞める新人が増えているのか。元凶は、どこにあるのだろうか?
働くための準備運動 どうしたら実現できる?
実際に働いている人(=リクルーター)と対面することで、学生は「未来の仲間」とつながり、「未来の仕事」を立体的にイメージでき、「働く」という行為への準備運動ができます。 私が実施した調査では、キャリアレディネスができていた学生ほど、リアリティショックが少ない、あるいはほとんどなく、入社半年後のワークモチベーションが高くなっていました(「新卒社会人の入社後半年間のメンタルヘルスとその関連要因に関する追跡調査― 大学就職準備教育と新入社員への社内サポート体制への示唆」)。
実際、新入社員の離職率が低い企業の多くは、自分たちから大学に出向き、自分たちの仕事を自分の言葉で伝えたり、長期のインターンシップを実施したりするなど、フェイスtoフェイスで学生と向き合う時間を大切にしています。
そこにあるのは「自分たちの思い、自分たちのやってきたこと、自分たちの会社のことを学生たちに直接伝えたい」という強い気持ちと、「自分たちと同じ志を持って、いばらの道を歩いていこうという意志が、アナタにはありますか?」という学生への問いです。
簡単にエントリーできる世の中だからこそ、あえて「自分たちが動こう!」、簡単に辞められる時代だからこそ、あえて「就活のハードルを上げよう!」、だって「働くってそんなに簡単なことじゃないから。働くって1人でやることじゃないから。入社する前から、きちんとしたつながりができれば心強い」。私たちは幸せになるために働くのだから、そのためにもきちんと汗をかこうよ――。
そんなメッセージをリクルーターが届けてこそ、「思っていたのとはちょっと違うけど、もう一踏ん張りしよう」と新入社員が思うことができる。学生がしんどいときに、リクルーターの先輩社員の“顔”を思い浮かべられれば、簡単に「辞める!」と言う新入社員を減らすことができます。
その“顔”になれるかどうかで、会社の未来が決まるといっても過言ではないかもしれません。企業は「今の若者は簡単に辞めちゃうからね〜」と嘆く前に、その“顔”を目指してほしいです。会社の未来が決まるといっても過言ではないのですから。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。
2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。
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